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2016.12.16 そのまなざしのみつめるさき 13
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ6 SIDEあきら =

牧野の問診が終わったと、医師が病室から出てきた。特に今話せることはないようで、そのまま去っていく。

「私はお茶でも買ってくるよ。ごゆっくり。」

そういって席を外してくれた家元の背中を見て、司が頭を下げるのに俺は何も言えなかった。誰にでも、頭を下げる男ではない。下げたこともほとんどない男だ。その司が見せる誠意を、俺だけではなくきっと誰もがわかってくれるはずだ。そう信じたい。

病室の中に入ると、看護師が空気の入れ替えをしていた。牧野は・・・ぼーっとタブレットに視線を落としていたが、音がしたからか俺たちへと視線を向けた。だが・・・その顔は、何も感情が表れていなかった。ただ俺たちを見ているだけ。視界に俺たちが入っているだけ。いつもの牧野らしさはどこにもない。それに、痩せて細く青白くなっていた。

「「・・・」」

司は、隣で立ち止まったまま足が前に進まないようだった。ここへ来るのに、もしかしたら牧野に泣かれるかもしれない、会いたくないと拒否されるかもしれないと考えていたはずだ。だが、そのどれでもない反応。それは何より心をえぐった。

「道明寺様、美作様。ようこそいらっしゃいました。」

中年の女性に後ろから声をかけられ振り返った。見たことがある。

「西門でご夫妻のお世話係をしております田原紬(たはらつむぎ)と申します。どうぞこちらへ。立ってらっしゃってはお疲れでしょう。」

俺らの母親世代の女性・田原さんに進められて牧野のベッド横の椅子に腰かけた。俺たちを見ているのに、何も言わない牧野。牧野を目の前にして何も言えない俺たち。重苦しい微妙な空気が流れていた。

「つくし様、お加減はいかがですか?そろそろお茶でもいかがです?ご一緒にと思いまして、お団子を買ってまいりましたのよ。」

「・・・」

田原さんの問いかけに、牧野は何の反応も示さない。だがゆっくりと彼女へと視線を向けてこくっとうなずいた。それに、ほっとして思わず息を吐きそうになったが、それは俺だけではなかったようだ。

「お二人もご一緒にお茶でもいかがですか?つくし様のお団子に合わせてお茶をお入れしますから。」

俺たちの間にある微妙な空気なんて見えていないかのように自然に接してくれることがありがたかった。そして彼女がお茶を入れに席を外し、看護師もいなくなって俺たち3人が静かな部屋の中に取り残された。

「あの、牧野・・・久しぶりだな。」

「・・・」

俺を見ても、牧野は何の反応も示さない。ただじっと俺を見る。それに変に緊張した。しゃべれないはずの牧野の無表情に、なんだか責められている気さえした。

「・・・牧野・・・すまねぇ、俺のせいで・・・俺がお前らを・・・ホントにすまねぇ・・・悪かった・・・」

長い沈黙の後、司は俺の隣で牧野に頭を下げた。当然、何も帰ってくる言葉はない。でも、司は心からの謝罪をし、頭を下げ、その声は震えていた。

牧野が、ゆっくりと動く。その手はサイドテーブルに伸び、ペンを手にとってタブレットに何かを書いていた。そして、それを俺に見せてくれる。

「道明寺のせいじゃない・・・」

そこに書かれたのはその言葉だった。司は、顔を上げ赤くなった目でそれを見つめる。牧野は続けて、ゆっくりとタブレットに文字を書いては俺たちに見せてくれた。

(あれは事故だよ。誰のせいでもない。)

(みんな怪我をして、みんなひどい目にあった。)

(あたしだけじゃない。)

(だから、謝らないで。)

「「・・・」」

無表情に、淡々と言葉を書いていく。もう慣れたかのようなその行動に、胸が痛くなった。

「牧野・・・怪我の痛みは少しはいいのか?」

「(コクン)」

「そうか・・・お前、ちゃんと食事とってないだろ、痩せたぞ。食べないとだめだ。食べないと元気にならないだろ。」

「(コクン)」

そんな当たり障りのないことしか言葉をかけることができない。あまりに多くのことがありすぎて、起こりすぎて、何を言っていいのかわからなかった。牧野がタブレットに文字を書く。

(知ってるんでしょ?2人とも。)

ドクン、と心臓から変な音が聞こえた気がした。

(ごめんね、気をつかわせて。)

「そんなこと言うなよ・・・俺たちにとってもお前は大事なんだ、牧野。心配するさ。」

(ありがとう。)

言葉は短いが普通に会話が成り立つ。なのに、表情がなくて心がどこかに行ってしまっている人のように見える。

(総に会った?)

「ああ。さっき司と会いに行ってきた。」

(総のことも知ってるよね。)

「・・・ああ。何日か前に、家元に聞いたよ。」

(総、きっと起きるよ。)

「当たり前だろ。総二郎はそんなヤワな奴じゃない。」

(うん。きっと、総は大丈夫。)

(あたし、あの人の強さを信じてるから。)

声のない言葉には表情がない。でも、想いが見えてそれが切なくなる。

(道明寺、お願いがあるの。)

それまで黙っていた司はごくっと息をのんだ。

「なんだ?」

(これ読んで。最近書いたの。)

そういって俺たちにタブレットを渡してくる。そこには1つのテキストファイル。そしてそこには、牧野の今の心情が事細かに書かれていて・・・それを俺と司はただ読むことしかできなかった。

***
久しぶりに会ったのに・・・胸の詰まる再会。
つくしの様子に、司もあきらもわかってても言葉がかけられません・・・

次回は司です。司もつらいだろうな・・・どうにもできないから余計に。

明日12時にお知らせがあります。よかったら読んでくださいね(^_-)-☆
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