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 『Life is Beautiful』をのぞきにきてくださってありがとうございます。
 しばらくサイトをあちこちさわる予定なので、お見苦しいところもあるかもしれませんが
 ご理解ください。よろしくお願いします。

 現在お話の更新予定はまだ未定となっております。今しばらくお待ちくださいm(__)m

 INDEX

2016.12.03 冬はホテルで 4
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2016.12.03 冬はホテルで 5
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2016.12.04 冬はホテルで 6【Fin】
冬はホテルで
つくしちゃん、生きてるでしょうか・・・w
***

「ん、ぅん・・・」

気を失ってしまってるつくしの顔を見て、さすがに罪悪感が芽生えて頬を撫でて額にキスを落とした。

「まあ我ながら、ひでーな、俺。」

つくしの体はあちこちにうっ血のあと。俺が残したキスマークが、消える間もなく新しいのが増えてるせいでなんだかひどい状態だ。それに、つくしの体とその下のシーツは、もうぐっちゃぐちゃ。いったいなんでなのかは考えなくてもわかる。

「Hallo。すまないけどベッドメイキング頼めるか?」

『Yes、Mr。』

気の効きすぎるホテルの人間に電話を一本入れて、つくしを抱き上げて風呂へと向かった。こういう時風呂が常に湧いてるってありがたいよな、なんて思いながら空を見上げると・・・

「うわっ、すっげー・・・こりゃ確かにすげーわ。」

ホテルに到着してから4日が過ぎていたが、吹雪はやんでもずっと曇り空で、まだオーロラは見れていなかった。で、そのあいだ何をしてたかっていうと・・・まあ、宣言通り、つくしとたっぷりじっくり好きなだけ楽しんでたわけで。





『む、無理だよこんなの!』

何度もつくしにそのセリフを言わせながら、それはもうホントに、つくしが赤面するようなことばかり要望した気がする。まあでもこれくらい普通やってんじゃねーのみんな、と思う俺からしたら楽しいだけの時間だったが、つくしにしてみればえ?うそ!みたいなことの連続だったらしい。

椿さんが用意してくれたランジェリーは刺激的すぎて、つくしは着るのさえ嫌がった。でもそれしかないと知ると着ないわけにはいかず、着てみたそれらは壮絶にやらしくて・・・まあ、大して長い時間は着てられなかったのは仕方ねーだろう。総レースのやつは何枚か勢い余って破っちまって、つくしにも怒られたけど・・・ま、仕方ねーよな。色っぽいあいつが悪い。

4日もホテルの中じゃさすがに退屈だろうと、ホテルの人間に声をかけて出掛ける先がないか聞いてみたところ、ホテル内の共有スペースに案内してくれた。ビリヤードにダーツにチェス、それになぜか将棋にトランプに卓球があったその部屋で自由に過ごしていいと言われ、つくしのリクエストでちょっと遊んだりもした。なぜか卓球をするときは浴衣で、と言われて着替えさせられ(いったい誰の好みでおいたんだか知らねーけど絶対椿さんじゃねーだろう)まあそれもそれで楽しくて、誰もこないのをいいことにチラ見えしてたつくしの内腿がやらしくてそこで襲っちまったのはご愛敬だ。





メシ食って、2人で温泉に入ってたまにマッサージを受け、ヤりたいだけヤりまくって時には裸のままシーツにくるまって暖炉の前でどーでもいい話や懐かしい昔話をして笑って。

「こーゆうのを幸せっていんだろうな、マジ。まあつくしにとっちゃ・・・」

湯船の中で俺に体を預けすうすうと寝息を立てているつくしにとっては、こういう不健全で何もしない自堕落な生活を送るのは貧乏性な彼女の性格からして許せないらしいが、最近滅多になかった俺との2人きりの時間を、つくしなりに楽しんでくれてたと思う。ここまでヤりまくってる俺には『ま、まだ元気あるの?』なんて、さすがに若干引いてたが。

オーロラのかかった空を見上げながら、つくしを抱きしめて頬にキスを送る。

「お前がいてくれりゃ・・・別に俺は何もいらねーんだよ。お前がいてくれることが俺には何よりのプレゼントなんだからな。」

手に入れたくても手に入れられなかった時のことを思えば、こいつが俺のそばにいてくれるのは、俺にとってはオーロラを見るより奇跡に近い気がする。

「つくし、愛してる。」

頬にチュッとしてると、俺の腕の中のつくしがビクッと動いた。どうやらお姫様のお目覚めらしい。

「お、起きたか。大丈夫か?」

「お、おはよ・・・もう夜だけど・・・」

「いまさらなに照れてんだよ。俺がお前のこと愛してるのなんて、お前もみんなも、誰だって知ってることだろ。」

「そうだけど・・・あんまり総、そんなこと言わないし・・・」

「そうか?まあ、毎日のように囁くようなキャラじゃねーしな、俺。それより、ほら、空。」

「え?わっ!うわ~~~~~っ!!きれい~~~!」

俺に抱きつきながら空を見上げるつくしは、勢い余って胸が俺の顔の目の前で揺れてることすら気づいてないらしい。

「総!すごいね!すっごくキレイ!これ、宇宙からも見えるんだよ!?すごくない!?なんか神秘的~!それをこんなあったかい場所であったかいまま見れるなんてなんて贅沢!もう~~~!」

俺はそれより俺の目の前でふるんと震えるものの方が楽しくて好きなんだが。

「総?もう、総!何見てるのよ!見るのはそこじゃないでしょ、そ・ら。空見てよ!せっかくのオーロラなんだよ!?そんな滅多に見れるものじゃないんだから!」

「・・・じゃ、その滅多にないオーロラの元で、愛を確かめ合うか。」

「え?」

「滅多にないから記憶に残るだろ?俺とお前だけの、誰にも内緒の記憶が。」

「・・・まだそんな元気が・・・あるみたいだね・・・信じられない。」

つくしのひきつった顔も愛おしい。

「お前が相手ならいくらでも。」

さあ、また愛を囁こう。まだまだ時間はたっぷりある。

***
まだ!まだヤっちゃうらしいです!どんだけ元気なんでしょう!
たぶんこのもやっとしたところを全部書いたら、1カ月くらいRのお話をお届けできるかもしれませんw

総二郎にとって何よりのプレゼントは・・・つくしがそばにいてくれること❤
ラブラブでうらやましいなあ~うふふっ(*゜v゜*)総二郎、HappyBirthday(。・ω・。)ノ♡
お付き合いいただきありがとうございました。

18時よりあとがきとお知らせを更新します~
2016.12.05 そのまなざしのみつめるさき 8
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ1 SIDEつくし=

―――――総、行かないで、総。あたしをおいていかないで、そ・・・

「・・・う・・・」

「っ!つくし!?目が覚めたのつくし?」

ひどく重い頭のまま目を覚ますと、見えたのはママの顔だった。ひどく青い顔。それに、独特のこの匂いは・・・

「・・・ここ病院?・・・なんで・・・?」

「姉ちゃん、大丈夫か?俺、先生呼んでくるよ。」

一瞬見えた進の顔も顔色が悪かった。なんで・・・

「つくし、大丈夫よ。まだ動いちゃだめよ、今お医者様がくるからね。」

涙ぐむママの顔を見ながら頭に浮かんだのは・・・血の色だった。

「ママ、総は?総はどうなったの?総、あたしをかばって・・・生きてるよね?大丈夫だよね?」

遠くから銃口を向けてきた男の人。最初の数発はその人から一番近かったあたしと類に当たった。ホントならいつもはそれぞれの家のSPがたくさんいただろうけど、場所が人通りの多いところだったし急な帰国でみんな明日には日本を去るからか、いつもよりSPさんの数も少なかった。あたしたちの少し離れたところを通り過ぎる人ごみの中からの発砲に、歩いていた人たちもパニックになって犯人を取り押さえるのに時間がかかってしまった。

「つくし、総二郎さんは大丈夫だから、とにかくあんたも安静にしとかないと。動いちゃだめよ、今お医者様くるからほらじっとして。」

起きあがろうとするあたしを押さえるママは慌てていた。でも、あんなの・・・大丈夫なはずがない。撃たれたあたしをかばうように抱きしめてくれた総も、肩のあたりが真っ赤に染まっていた。それに・・・

「ホントに大丈夫なんだよね?だって総、頭を・・・頭を撃たれたのに・・・あたしをかばったせいで・・・」

「つくし、落ち着いて。」

たぶん、いや、確実に総の後頭部に弾が当たった。総は崩れるように倒れて、見まわしたあたりも悲惨な状況だった。SPに囲まれた道明寺も美作さんも倒れ込んでいたし、類も意識がなかった。犯人は銃を両手に持って暴れまくって、SPの人たち数名が撃たれながら取り押さえて、通行人も何人も倒れていて悲鳴と遠巻きに見守る人で大混乱と化していた。

あたしを抱きしめながら倒れた総の頭部の後ろには血の海が広がっていた。ただ怖くて、総の命が流れ出ている気がして手が震えた。あたしも痛かった。痛くてたまらなかった。でも、あたしの大事な人が、目の前で大事な命が消えるかもしれない瞬間を見ていることしかできない自分が・・・

「・・・ママ、赤ちゃんは?」

「・・・っ、つくし・・・」

「あたしと総の赤ちゃんは・・・どうなったの?あたしたちの赤ちゃん・・・」

「つくしさん!」

見たこともないくらいひどい顔色でやつれたお義母様が、白衣を着たおじさんと看護師と一緒に病室に飛び込んできた。

「お義母様、あたし・・・総はどうなったんですか?赤ちゃんは?あたしと総の赤ちゃんは?大丈夫ですよね?2人とも、みんな大丈夫ですよね?」

「つくしさん、今は何も考えないで・・・総二郎も頑張ってるわ。だから・・・」

「若奥様、まだ起きあがられてはいけません。まだ安静に・・・」

「あたしの赤ちゃんは?どうなったんですか?総があんなに楽しみにしてくれてたのに、あたしの赤ちゃんは?先生!大丈夫だって言ってください!ねえ、ママ!お義母様!あたしの・・・」

「西門さん、落ち着いてください!」

あたしの肩を押さえる看護師さんたちでさえあたしと目を合わせようとしてくれない。誰も、誰も、あたしに大丈夫だと言ってくれない。あたしの赤ちゃんは無事だと言ってくれない。嘘だ!嘘だ!!!

「総!やだ!総!あたし、総の赤ちゃん産むんだもん!離して!」

「つくしさん!」

暴れるあたしの肩に手を置いて、泣きはらした顔であたしを見つめるお義母様は、ゆっくりと、言葉を発した。

「つくしさん。いい、赤ちゃんはね・・・あなたの赤ちゃんは、あなたを助けてくれたの。だからね、もう、赤ちゃんは・・・」

「いや!嘘!ウソ!聞きたくない!そんな嘘聞きたくない!総!総!」

「おい、鎮静剤を!」

どうしてどうしてどうして!あたし、何も悪いことしてない!あたしはただ、あたしは・・・混乱する頭では何も考えられなくて、気がつけば意識が遠のいていった。





―――ふわふわのたんぽぽの綿毛が飛ぶ、きれいなお花畑。気がつけばそこにいた。でも誰もいない。あたしだけだった。

「総!」

『大丈夫だよ。』

どこかからか声が聞こえて、目の前には小さな蝶がひらひらと飛んでいる。

『大丈夫だよ、心配しないで。』

その蝶が話しているように聞こえた。

『大丈夫。ちょっと遅くなるけど、すぐに会えるよ。』

「誰と?赤ちゃん?それとも総?あなたが、2人を連れいていっちゃうの?」

『そんなこと、しないよ。』

「お願い。あたしはどうなってもいいの。だから総を、赤ちゃんを助けて。」

『これからきっとつらいよ。でも耐えたら、耐えられたら、きっといいことがあるから、待ってて。』

「待って!どういうこと!2人を助けてくれるの?」

『ごめんね、これが精一杯だったんだよ。』

「待って!」

『でも、あなたなら大丈夫だよ・・・ママ・・・』

蝶は空の彼方へ消えてしまった。

***
ああ、つくし・・・ごめんね、ごめんよ。と思いながら書いてました。
こんなにつらい思いをさせてしまってるけど、だからこそ幸せになってほしいし
幸せにしてやるぞ!と思いながら・・・でも読んで不快な思いをされる方もいたかと思います。
申し訳ありません。しばらくはホントけっこうつらいかもしれない・・・

次回更新は水曜12:00です。
2016.12.07 そのまなざしのみつめるさき 9
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ2 SIDEつくし=

「・・・現状としましてはまだ意識は回復していらっしゃいませんが、数値的には非常に安定しておりますのでもう少し様子を見るべきだと思っています。外的刺激には反応を示されてますので、脳の傷ついた部分も順調に回復しておられると・・・」

先生の、総の状況を話してくれる声がとても遠くに聞こえる。病院で目を覚ましてから、あたしは総のことも亡くしてしまった赤ちゃんのこともなかなか受け入れることはできなかった。あたしのせいで、あたしのせいで。ずっとその言葉が頭をよぎる。あたしを守ろうとして傷ついてしまった総。あたしが傷ついたせいでいなくなってしまった赤ちゃん。あたしは2人に謝りたいのに、今はそれをすることさえできない。

「まだ若奥様も回復されてらっしゃいませんから、今日はこのくらいにされた方が。じゃ、病室にお連れして。」

目が覚めてから半狂乱で連れてきてもらった総のいる集中治療室。何度きてもあたしはそのガラスの向こうに入ることさえできない。今のあたしは腹部損傷がひどくて1人で歩くことさえままならない。いつの間にか撃たれてた左腕は、固定されてて思うように動かすこともできない。あれからもう3週間。まだ、総は目覚めてくれない。

「つくしさん、大丈夫だ。総二郎はそんなヤワなやつじゃない。私たちをこんなに心配させて、目が覚めたら怒ってやろうじゃないか、一緒に。なあ?」

車いすのあたしの目線にあわせてしゃがんでくださったお義父様のやさしい言葉に、ちょっとだけ頬が動いた。それを見てまわりがホッとする空気を感じた。・・・心配をかけてしまっている。あたしも。





あれから、自分の状況を受け止めることができなかったあたしは、今考えても誰が見ても心配になるくらい頭がおかしくなってた。自分が死んでしまいたかった。あたしが総に代わってあそこに横たわりたかった。なのにあたしは何もできない。

検査をして検査をして検査をして、なのにその結果は誰も教えてくれなかった。だからあたしはお医者様に言ったのだ。あたし自身のことはあたしに話してほしいと。総のことも妻であるあたしが知るべきことだと。それは周囲が止めようが口止めしようが、あたしが知らなくてはいけないことだからと。

お医者様は両親と義両親とかなり話し合いを重ねたようだ。でも、あたしから4人に頼み込んだのもあって先生はそれから検査の結果をすべて話してくれた。

総は・・・やはり脳に被弾して損傷していた。手術で弾は摘出したけど、ケガをしたところが脳だから目が覚めてみないとホントにどうなるのかはわからないとのことだった。だけど、外的刺激には反応をしてるから、手足のマヒはないのではないか、とのことだった。あとは、総も右肩に被弾していたけど、そこは今のところ問題ないらしい。

そしてあたし。内臓損傷してしまったあたしは、今回流産をした。内臓は今のところ順調に回復しているようだけど・・・可能性として、だけど、今後の妊娠は難しいかもしれない、と言われた。卵巣も1つ傷ついてしまい、卵子を作ること自体が難しくなっているらしい。あたしの左肩も問題なく回復しているし、今後についてもあくまでも可能性だから今はあまり気にしなくていいと言われた。言われたけど・・・

きっと、かなり深刻なくらいに妊娠できない状況なんだろうということはなんとなくわかった。お医者様はすごく上手に誤魔化してくれていたけど、同じレベルをうちの両親に求められるはずもない。そうか、だからパパはあまり病院にはこなくて、ママはしょっちゅう涙ぐんでたのか、といまさら理解した。





―――少し1人になりたい。

そう言ったあたしをみんな心配そうにしながらも1人にしてくれた。1人になったあたしは・・・泣くしかできなかった。ただ泣いた。なぜ、どうして、なんで。いろんな疑問符が頭に浮かぶけど、どれも答えなんか出るはずもない。あたしは・・・そんなあたしが、こんなあたしが、これからも総の元にいられるはずがない。総を、西門の大切な未来をあたしが傷つけてしまった。総の大事な、西門の大事な跡継ぎを、あたしはもう産むこともできないかもしれない。

どれくらいそうしていたんだろう。真っ暗な部屋には淡い月の光が差し込んでいて、それがあたしの手を照らしていた。

「(そう・・・え?)」

総。そう声に出したはずだった。あたし、耳までおかしくなってしまったんだろうか?総?総?あれ?何度も声を出すのに聞こえない。でも・・・遠くで車が走る音は聞こえている。まさか・・・あたしがしゃべれてないの?声が出てないの?

手探りでベッドサイドのスマホを手にとった。確か、そう、確かスマホにボイスレコーダーを入れてたはずだ。ONにしてスマホに向かって大声を出してみる。何も聞こえない。その録音した音を再生しても・・・何も聞こえなかった。

は、ははははは・・・声が、出ない。あたし、もう声も出なくなった。ははははは・・・泣きながら笑っても何の音にもならない。あたし、あたしは・・・どうしたらいいの?ねえ、どうしたらいい?そう尋ねたところで答えてくれる人は当然いなかった。

***
あれから3週間。総二郎はいまだ目覚めず、つくしにはついに真実が語られ・・・
自分が、自分のせいでと思い詰めてしまったつくしは、結果として声が出なくなってしまいました。
つくし・・・ごめんね。 次回は今回の件で誰よりも自責の念を感じている人です。

金曜12:00更新です。
2016.12.09 そのまなざしのみつめるさき 10
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ3 SIDE司=

ありえねぇ!ありえねぇありえねぇありえねぇ!!なんなんだそれは!どういうことだよヤブ医者が!んなことあってたまるかよ!

俺の通る道を顔色の青ざめた社員たちが飛び退くようにどけやがる。後ろを電話でどこかに指示を出しながらの西田もついてきてやがるが、おせぇよ!さっさとしねぇか能面じじい!イライラの限界でそこにあった植木鉢を蹴っ飛ばしたら、俺の足にも激痛が走った。

「くそっ!なんだってんだ、こんなの!邪魔くせぇ!いてぇじゃねぇかよ!」

「副社長、いい加減にされてください。本来はまだ松葉杖をついていなくてはいけない状態なのですよ。少しは速度を落としてゆっくり・・・」

「うるせぇ!!!」

俺の剣幕に周囲にいた人間はとっくにいなくなって、廊下には俺と西田だけ。相変わらずの能面ヅラだけが無表情に俺を見ている。

「俺の体なんてどうでもいいんだよ!こんなの屁でもねぇ!それより!」

「それ以上のお話をここでされるのはおやめください。」

「なんだと!」

「それ以上はつくし様の最もプライベートなことでございます。このようなところで怒り任せにお話されるべきことではありません。そもそも、本来は司様が知るべきことでさえありません。つくし様が道明寺記念病院にいらっしゃいますから病状が報告としてあがっており、今回副社長は報告として知りえただけで、」

「んなこたぁ言われなくてもわかってる!」

歩き出す俺の後ろを、ため息をついた西田がついてくる。

「せめてその般若のようなお顔はどうにかされた方がよろしいかと。そんなお顔で病院に行かれたらつくし様が余計気を使われます。」

言われなくてもわかってる!だがこれを、この怒りをいったい誰に向けりゃあいいってんだ!病院へと向かう車の中で、西田が手渡してきた水を飲み干して一息ついた。確かに、冷静にならねぇといけねぇ。俺が、俺様が責任を持ってやるべきことだ。

「西田。てめぇもあの報告書読んでんだろ?内容全部読みあげろ。」

「お読みになられたのでは?」

「最初の数行読んだ時点でキレてPCの画面ブチなげた。だからそれ以上は読めてねぇよ。」

「まったく・・・社の備品になんてことをされるんですか。あれは副社長室専用の特別仕様なんですよ、今後は慎まれてください。」

「いいからさっさと報告書読みあげろ!」

「かしこまりました。」

西田がタブレットの画面をみながら淡々と読みあげた内容は、いったい何の冗談だと喚き散らしたくなるものだった。牧野の声が出ない。しゃべれていない。ストレス性の失語症の可能性が強い。狂ったかのように総二郎が自分をかばってケガをしたこと、子供を亡くしたことを泣き叫んで嘆いてたってのに、ここ数日表情さえ表に出さなくなって様子がおかしい。今後の検査次第では心療内科系の治療も追加する必要がある。そんな内容だった。

「西田。その報告あげた医者、腕はまともなんだろうな。」

「道明寺記念病院の病院長の診断です。それに、総二郎様、つくし様の治療に関しては各分野のスペシャリストを集めて特別治療チームを作って対応しております。そのチームが出した報告書ですから間違いはないかと。」

「だから牧野にホントのことを話すのはやめろって言ったんだ!」

「それは司様がお決めになることではございません。西門家、牧野家両家の皆様で話し合われて決められたことです。何よりつくし様の強いご希望だったのです、仕方ございません。」

わかってるさ、んなことは。わかってるが、じゃあいったい俺はこれからどうすりゃいいってんだ。頭を抱えたくなる状況にこれからのことを考えてたら、車はすぐに病院についた。

「司様、十分に気を付けられてください。病院内での司様の行動や言動は高い確率でつくし様のお耳に入ります。つくし様がこれ以上気に病まれないようにして差しあげるのが、今は一番よろしいかと。」

「俺もそんなバカじゃねぇ。こい、西田。」

怒りのオーラを何とか封じ込めて、院長室に向かった。院長は青ざめた顔で俺を出迎え、報告書をあげた責任者の医者を院長室に呼び話を聞くが、結局は同じことだった。牧野はしゃべれてない。ただじっと窓の外を眺めてるだけだそうだ。

「・・・おい。万が一、あいつが変なこと考えて窓の外に飛び出す、なんてことはないんだろうな。」

「今の精神状態ですと、絶対にないとは言いきれない状態です。かといって投薬治療に踏み切るのもまだ内臓損傷も治りきっていない段階ですし・・・今はご家族に決して目を離さないようにお願いしております。万が一の場合も、窓は開かないようにしてありますので大丈夫でございます。その他危険と思われるものはすべて遠ざけてさせていただいております。」

俺のせいであいつら。俺が、全部ぶち壊しただけじゃ飽き足らず、まだ、まだあいつらにこれ以上の苦しみを科すのかよ。柄にもなく頭を抱えてしまった。

―――コンコン。

ドアのノックの音とともに入ってきたのはあきらだった。

「よう。こっちきてるって聞いてな、って。どうしたんだ司?顔色悪いぞ?」

心配そうなあきらの顔を眺めながら、俺はしばらく言葉を発することができなかった。

***
さすがの司も・・・どうにもできない状態です。
司自身もケガをしてるけどそんなのどうでもいいくらい、司も2人のことに心を痛めて苦しんでる。
司くんごめんよ、とホントに言いたくなります・・・
次回は誰?第三者的な視線で見てくれる方の登場です。

次回は月曜12:00更新です~
2016.12.12 そのまなざしのみつめるさき 11
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ4 SIDEあきら=

司がきてると聞いて向かった院長室。そこにはらしくなく頭を抱えて青ざめた顔をした司と、こちらもめずらしく顔色の悪い西田さんがいた。

「司、どうしたんだお前。体、調子悪いのか?」

今回の事件で司は腕と足を撃たれ骨折し、それぞれギブスで固定している。が、この化け物のような男は相当今回の件に責任を感じたんだろう、手術して3日で医者の制止を振り切って退院。この大スキャンダルの残務処理にあたってる。まあ骨折だしな、と思ってたら松葉杖もつかず無理をしてるらしく、西田さんが大変そうだとうちの親父が話していた。

今回の銃撃事件、正直司には何の非もない。日本支社長の独断でとある会社の特許技術を奪いとり、その会社を倒産に追い込んでいた。小さな会社だったらしく、技術開発のために借金を抱えてた社長はそれを苦に自殺。家族もつらい思いをしていた。その、息子の復讐だった。道明寺といえば、一番マスコミにクローズアップされてるのは当然司。真実は何も知らず、司に父親の復讐すべく機会を狙っていたその男は、今回の帰国を知って買っていた銃をもってあの場にやってきたのだ。

その事実はつい先日、調査報告と謝罪のための楓社長の記者会見を見て俺は知らされたが、司も何も知らないことだったらしい。大体NYに拠点を置いてる司が日本でのそんな細かい内情を知ってるはずもない。実際支社長はその報告は本社にあげておらず、即刻解雇し刑事告訴されたとのことだった。

「あきら・・・お前、調子はどうだ。」

「俺は大したことないさ。それよりお前大丈夫か?お前のそんな顔はじめて見るぞ。」

「俺は平気だ、なんてことねぇよ。それより・・・お前最近牧野に会ったか?」

「牧野?いや、あいつもだいぶ興奮してただろ?俺も検査や社の人間が来たりしてたからここ3日くらい会いに行ってない。」

「そうか・・・」

俺は太ももと腹を撃たれ、手術をして起きあがれるようになったのはここ1週間くらいの話だ。類は内臓損傷がひどくまだ起きあがれていない。花沢は病院を持ってるからと類はオペ後すぐに花沢の病院に移送され、あと2か月は絶対安静らしく暇だと昨日オンラインで話したばかりだ。

「牧野、どうかしたのか?」

俺も、牧野がどういう状況かは聞いてたし知っている。ようやくできた子供は流産してしまい、総二郎が自分をかばってケガをしたことをひどく悔やんで、あいつの精神状態が危うくなってたのもこの目で見ていた。

「司様、お話にならない方が。」

「普通だったら俺も話さねぇ。だが今は総二郎があんな状態だ。俺らが牧野を助けねぇで誰があいつを助けるってんだよ。それにはこいつにも、事情を話しておく必要がある。」

「ですが・・・」

「あきらだけじゃねぇ。桜子も滋も、なげぇ付き合いなんだ。何があったって牧野のそばにいてくれるはずだ。それには知らねぇと、あいつを支えてやれねぇだろ。お前が気にすることはねぇ、西田。俺が責任をとる。あとで総二郎に文句言われようが牧野に何か言われようが、俺が全部責任をとる。あいつらが元気になってくれるなら、俺はいくらでもなんだってやるぞ。」

まったく話は見えないが司の様子からして牧野か総二郎によほどよくないことがあるんだというのはわかった。

「司、どっちだ。総二郎か?牧野か?」

「今は牧野だ。あきら。さっき医者から報告を受けた。実は・・・」

司が話してくれた牧野の病状に、正直言葉が出なかった。子供が、もうできないかもしれない。それを知った牧野は、話せなくなっている。失語症。どれを聞いても、簡単に言葉さえ出ない話だった。

「・・・子供は、絶対また妊娠できるようにしてやる。うちの姉貴もなかなかできなくて、アメリカで医者にあれこれやってもらったからな。そっちは姉貴が全面的にバックアップすると言ってきてる。」

「そうか。椿さんがそこまで言ってくれるならかなり心強いな。」

「ああ。だが・・・」

子供は、可能性はゼロではないらしいから何とかなるかもしれない。だが・・・

「失語症ってショックが原因なんだろ?確かに今の状況じゃ牧野がまいるのも仕方ないだろうな・・・まあ、それも総二郎が目を覚ませばなんとかなるかもしれないし・・・おい、司?」

「・・・」

気を取り直すようにあえて普通に話をしたが司からは返事は帰ってこなかった。院長の席に座って、目元を手でおおうようにがっくりと肩を落としていた司は・・・泣いていた。

「司・・・」

「司様・・・」

長い付き合いになるが、俺は司が泣いてるところをはじめて見た。

「・・・俺はよ、あいつに幸せになってほしかったんだ。俺じゃ幸せにできなくて手放すしかなかった牧野を、総二郎はホントに大事に、幸せにしてくれてた。あいつが、牧野が幸せそうにしてくれてりゃ俺も幸せだった。なのに・・・俺が壊しちまった。俺が、総二郎も牧野も、お前らも傷つけて、あいつらの幸せぶち壊して・・・どうすりゃあいつらに償えるんだ・・・こんな・・・金なんていくらあったって償えねぇ。壊れちまったものを元に戻すことなんてできねぇ・・・」

はじめて見る弱った司の悲痛な声が、ただ部屋に響いていた。

***
自分が原因で壊してしまったものを一番悔やんでるのは司だろうな。
司もさ、つくしの幸せを誰より願ってたはずだから・・・つらいだろうなと思います。
次回もあきらです。しばらくあきらくん登場です。

次回は水曜12:00更新です。
2016.12.14 そのまなざしのみつめるさき 12
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ5 SIDEあきら=

「・・・」

3人そろって、何も言葉を発することができなかった。何を言ったところで、それは願望か弱音か希望に過ぎない。あまりにつらい現実を、直視するのはさすがにきつい。

「・・・わりぃな。らしくねぇこと言っちまった。」

何も言えない中で、それでも誰より先に前を向いたのは司だった。

「総二郎が目を覚まさねぇんだ、俺がこんなこと言ってられねぇな。総二郎の代わりに牧野を支えてやって、総二郎が目を覚ました時に元気な牧野に会せてやりてぇ。」

総二郎がいつ目を覚ますのかは正直わからない状況だと、昨日家元から聞いていた。脳の損傷だから後遺症が出る可能性もある。目を覚ましても、もしかすると・・・

「司。お前の気持ちはわかるが総二郎はもしかしたら・・・聞いてるんだろ?」

「俺も目を覚ました。あの頃の俺でさえ目を覚まして正気になったんだ、総二郎が起きねぇはずはねぇよ。総二郎には何より守ってやりてぇ牧野がいる。それをほおってあの世に行くようなヤワな奴じゃねぇだろ。俺にはわかる。だからあいつは絶対目を覚ます。」

司の、確信を持ったような言葉に心の中で苦笑いが出た。あの事件があってからすでに3週間。俺でさえ、総二郎の目覚めを信じながらも過去の司のことを思い出して多少弱気になっていた。恐らくそれは牧野も、総二郎の両親もだろう。だが司は信じてる。絶対に、何があっても目を覚ますと、牧野がいるから大丈夫だと信じてる。俺も、信じてやらないといけないのにな。

「だな。確かに、総二郎があんなに惚れてる牧野をおいてずっと寝てられるはずもない。そのうち目を覚ますか、あいつなら。」

「ああ。だからそれまでに、牧野をちょっとでも、俺はどうにかしてやりたい。」

赤い目をした司は、しばらく押し黙り何かを決めたかのように強い視線でまっすぐ前を見ていた。

「西田。」

「はい、司様。」

「アメリカの研究施設を買収する。牧野を治してやる方法を見つけられる専門医を大至急で集めろ。ばばあが総二郎の治療法を探させるのに、今買収に動いてるだろ。そっちも俺の元でやるからとばばあから権限ぶんどってこい。金は俺が出す。道明寺としてではなく、俺がやる。そこで総二郎が元に戻れるよう、牧野がまた妊娠できるよう、しゃべれるように、やらせる。」

「かしこまりました。急ぎ準備いたします。少々失礼いたします。」

西田さんは心得たかのように部屋を出ていった。目をふせた司は、ふっと息を吐く。

「あきら。総二郎に、会いに行かねぇか?」

「ああ、行くか。」

ゆっくりと、総二郎がいる集中治療室に向かった。会うといっても部屋の中に入ることはできない。ガラスのこちら側から、総二郎が目を覚ますのをただ待つだけだ。だが、機械に繋がれ眠る総二郎をじっと見つめる司は、総二郎に何かを誓うかのようだった。きっとこいつの中で、詫びるだけではすまないすべてのことに、詫びではない形でケリをつけようとしてるんだろう。

「・・・司。あれはお前のせいじゃない。そういったところでお前は気にするだろうけど、気にするなよ。そんなこと、総二郎も牧野も望んでないんだからな。」

「そうも言えねぇだろ。俺はこいつらを絶対元に戻してやる。一生かかってもな。そのためならなんだってやる。」

「そうか・・・」

この事件を、司は抱えていくつもりなんだろう。そして償いたいと思ってる。それに、壊れたものを元に戻したいのはこいつだけじゃない。俺だって同じだ。だが司自身は何も悪くないだけに気の毒でしょうがない。

「あきら・・・牧野のところにも行かねぇか?」

「・・・だな。一度、様子を見にいくか。」

重い足取りで牧野の病室に向かう。あの事件があってから司が牧野と顔を合わせるのははじめてだ。俺も動けるようになってから何度か病室を訪ねたが、牧野は精神的に不安定で俺に会えるような状況じゃなく、会いには行ってたが大体牧野が眠ってる時で、目を覚ましてる牧野と顔を合わせるのは俺も今日がはじめてだった。

病室の前には家元が疲れた顔をして座っていた。

「家元。どうも。大丈夫ですか?」

「ああ、あきら君。それに司君も。久しぶりだね、2人とも具合はどうだい?今日はつくしさんの見舞いか、すまないね。司君、本当に、よくしてもらってありがたいよ。」

「いえ・・・道明寺のせいで大変申し訳ありません。」

「・・・楓社長も謝罪にきてくれたがね、今回の件はもうあまり考えないでおこうと思ってる。誰が悪いかより、今はあの2人が元気になってくれればそれでいいんだ。」

やりきれない気持ちを抱え、やつれた顔で無理して笑顔を見せてくれる家元はとても痛々しかった。

「あの、牧野は・・・」

「ああ。今は担当医が様子を見にきてくれて問診中だ。そのあいだ外に出てくれと言われてね。うちのの代わりにそばにいたのに、私には聞かせられない話らしい。仕方ない。」

それでこんなところにいたのか、と思う。家元夫人もかなり憔悴していたのを知ってるだけに、すべてが今悪い方へと空回りしている気がした。

総二郎、早く目を覚ませよ。せめてお前が目を覚ましてくれれば・・・俺はただそう願うしかなかった。

***
今は司もあきらもつらいけど・・・総二郎が何もできない今だからこそ
2人には頑張ってもらわないと、なんですよね。類も動けないし、西門家も疲れてるし・・・

読まれてる皆さんも、結構きついだろうなあと思いながら更新しています。すみません。
こういうお話読み続けるのつらいだろうなとは思うのですが、お付き合いください。
2016.12.16 そのまなざしのみつめるさき 13
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ6 SIDEあきら =

牧野の問診が終わったと、医師が病室から出てきた。特に今話せることはないようで、そのまま去っていく。

「私はお茶でも買ってくるよ。ごゆっくり。」

そういって席を外してくれた家元の背中を見て、司が頭を下げるのに俺は何も言えなかった。誰にでも、頭を下げる男ではない。下げたこともほとんどない男だ。その司が見せる誠意を、俺だけではなくきっと誰もがわかってくれるはずだ。そう信じたい。

病室の中に入ると、看護師が空気の入れ替えをしていた。牧野は・・・ぼーっとタブレットに視線を落としていたが、音がしたからか俺たちへと視線を向けた。だが・・・その顔は、何も感情が表れていなかった。ただ俺たちを見ているだけ。視界に俺たちが入っているだけ。いつもの牧野らしさはどこにもない。それに、痩せて細く青白くなっていた。

「「・・・」」

司は、隣で立ち止まったまま足が前に進まないようだった。ここへ来るのに、もしかしたら牧野に泣かれるかもしれない、会いたくないと拒否されるかもしれないと考えていたはずだ。だが、そのどれでもない反応。それは何より心をえぐった。

「道明寺様、美作様。ようこそいらっしゃいました。」

中年の女性に後ろから声をかけられ振り返った。見たことがある。

「西門でご夫妻のお世話係をしております田原紬(たはらつむぎ)と申します。どうぞこちらへ。立ってらっしゃってはお疲れでしょう。」

俺らの母親世代の女性・田原さんに進められて牧野のベッド横の椅子に腰かけた。俺たちを見ているのに、何も言わない牧野。牧野を目の前にして何も言えない俺たち。重苦しい微妙な空気が流れていた。

「つくし様、お加減はいかがですか?そろそろお茶でもいかがです?ご一緒にと思いまして、お団子を買ってまいりましたのよ。」

「・・・」

田原さんの問いかけに、牧野は何の反応も示さない。だがゆっくりと彼女へと視線を向けてこくっとうなずいた。それに、ほっとして思わず息を吐きそうになったが、それは俺だけではなかったようだ。

「お二人もご一緒にお茶でもいかがですか?つくし様のお団子に合わせてお茶をお入れしますから。」

俺たちの間にある微妙な空気なんて見えていないかのように自然に接してくれることがありがたかった。そして彼女がお茶を入れに席を外し、看護師もいなくなって俺たち3人が静かな部屋の中に取り残された。

「あの、牧野・・・久しぶりだな。」

「・・・」

俺を見ても、牧野は何の反応も示さない。ただじっと俺を見る。それに変に緊張した。しゃべれないはずの牧野の無表情に、なんだか責められている気さえした。

「・・・牧野・・・すまねぇ、俺のせいで・・・俺がお前らを・・・ホントにすまねぇ・・・悪かった・・・」

長い沈黙の後、司は俺の隣で牧野に頭を下げた。当然、何も帰ってくる言葉はない。でも、司は心からの謝罪をし、頭を下げ、その声は震えていた。

牧野が、ゆっくりと動く。その手はサイドテーブルに伸び、ペンを手にとってタブレットに何かを書いていた。そして、それを俺に見せてくれる。

「道明寺のせいじゃない・・・」

そこに書かれたのはその言葉だった。司は、顔を上げ赤くなった目でそれを見つめる。牧野は続けて、ゆっくりとタブレットに文字を書いては俺たちに見せてくれた。

(あれは事故だよ。誰のせいでもない。)

(みんな怪我をして、みんなひどい目にあった。)

(あたしだけじゃない。)

(だから、謝らないで。)

「「・・・」」

無表情に、淡々と言葉を書いていく。もう慣れたかのようなその行動に、胸が痛くなった。

「牧野・・・怪我の痛みは少しはいいのか?」

「(コクン)」

「そうか・・・お前、ちゃんと食事とってないだろ、痩せたぞ。食べないとだめだ。食べないと元気にならないだろ。」

「(コクン)」

そんな当たり障りのないことしか言葉をかけることができない。あまりに多くのことがありすぎて、起こりすぎて、何を言っていいのかわからなかった。牧野がタブレットに文字を書く。

(知ってるんでしょ?2人とも。)

ドクン、と心臓から変な音が聞こえた気がした。

(ごめんね、気をつかわせて。)

「そんなこと言うなよ・・・俺たちにとってもお前は大事なんだ、牧野。心配するさ。」

(ありがとう。)

言葉は短いが普通に会話が成り立つ。なのに、表情がなくて心がどこかに行ってしまっている人のように見える。

(総に会った?)

「ああ。さっき司と会いに行ってきた。」

(総のことも知ってるよね。)

「・・・ああ。何日か前に、家元に聞いたよ。」

(総、きっと起きるよ。)

「当たり前だろ。総二郎はそんなヤワな奴じゃない。」

(うん。きっと、総は大丈夫。)

(あたし、あの人の強さを信じてるから。)

声のない言葉には表情がない。でも、想いが見えてそれが切なくなる。

(道明寺、お願いがあるの。)

それまで黙っていた司はごくっと息をのんだ。

「なんだ?」

(これ読んで。最近書いたの。)

そういって俺たちにタブレットを渡してくる。そこには1つのテキストファイル。そしてそこには、牧野の今の心情が事細かに書かれていて・・・それを俺と司はただ読むことしかできなかった。

***
久しぶりに会ったのに・・・胸の詰まる再会。
つくしの様子に、司もあきらもわかってても言葉がかけられません・・・

次回は司です。司もつらいだろうな・・・どうにもできないから余計に。

明日12時にお知らせがあります。よかったら読んでくださいね(^_-)-☆
2016.12.19 そのまなざしのみつめるさき 14
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ7 SIDE司=

道明寺へーーー

そう俺宛に始まったテキストを読んだ俺たちは言葉を失った。





道明寺へ

今回の件、きっとあなたのことだから俺のせいで、なんて苦しんでいるかもしれないね。
でもそれはそうじゃないよ。道明寺だって被害者。

誰も悪いわけじゃない。道明寺も、あたしも、総も。
あれは事故で、きっと運が悪くて、神様が試練をくれたんだと思う。
あたしたちの愛が本物か、あたしたちの友情が本物か。それとも偽物か。今あたしたちは試されてるんだよ。

だから謝らないでほしい。
きっとあなたは誰より後悔して自分を責めると思うけど、責めないでほしい。あなたは悪くない。

あなたはあたしと総の、誰より大切な友人。
あたしたちのせいで罪悪感なんて感じてほしくない。
罪悪感なんて感じなくていいから・・・図々しいけど、お願いをしたいの。

総をね、治してあげたいの。
あの人を、もう一度元気に、もう一度お茶を点てられるようにしてあげたい。
それがあたしの望み。だから、力を貸してくれないかな。

あたしには何もないし、何もできないけど、総には絶対に元気になってほしい。元に戻ってほしい。
だから、力を貸してほしい。

あたしね、なんとなく予感がしてるの。
総、目を覚ましたらあたしのこと忘れてるんじゃないかって。
あの時の道明寺の時みたいに。でも・・・今のあたしにはその方がいいのかもしれない。

だって、会えない。総に申し訳なくて、悪くて、今までみたいな顔して総のそばにいられない。
だから忘れてくれてたほうがいいのかも、なんて思ってる。

だからね。
もし総が目を覚ましたら。もし総が何も覚えてなかったら。
ううん、目を覚まして覚えていたとしても。

これからは何も考えずに、悩まずに、お茶の世界に戻れるように力を貸してあげてくれないかな。
あの人は西門に必要な人なの。総がいたら西門はきっともっとよくなる。
総は・・・総は絶対に西門に戻らないといけないの。

あたしのことは全部秘密にしてくれないかな。
覚えていなかったら何も話さないでほしいの。
あたし、今のあたしを総に知られたくない。難しいことだってわかってる。でも、お願い。

総が目覚めるように、力を貸してください。
どうか総のために。お願いします、道明寺。こんなこと頼むのずるいとわかってるけど。
お願い。










「・・・牧野、これ・・・お前、どういうつもりだ?」

やさしく、具合の悪ぃ牧野にやさしく話しかけてやりてぇのに、俺から出た声は地の底を這うような声だった。だが、隣で同じものを読んでたあきらも顔色が悪い。この牧野からの文章を読んで、たぶんこいつも同じことを感じたはずだ。

「総二郎が元気になるならなんだってやってやるさ。絶対に目を覚まして、元に戻れるようにしてやる。だけどよ、なんだこの、秘密にしてくれって。総二郎が目を覚ましたら、覚えてようが忘れてようが、お前のことを一番に話すべきだろ。あいつはお前の旦那で、それがどんな状態だろうがあいつには知る権利がある。」

「司、やめろ。」

「あきら。けどよ、」

「今の牧野にはやめとけ。今のこいつには・・・」

牧野の顔を見れば、俺を見てるその表情は見たこともない無表情で。いつも見てる西田よりも能面みたいな、感情をどこかに置き忘れてきたみたいな顔だった。

「牧野・・・お前、総二郎に全部秘密にして、そのあとはどうするつもりなんだ?そこまで考えてるんだろ?」

あきらがやさしく問いかける。

「・・・」

「お前のことだ、大体考えてることはわかる。だがまだ総二郎も目を覚ましてないし、だからあいつが目を覚ました時どうかなんてわからないだろ?目を覚ましてお前のことちゃんと覚えたら、何より先にお前のことを聞くはずだ。お前の体のこと、子供のこと。知りたいと言われれば俺たちは教えるぞ。あいつはお前の夫で、お前はあいつの妻で、お前のことは総二郎は知る権利がある。そうじゃないか?」

理詰めで話すあきらの声も、いつもみたいな余裕がない。

「まだ総二郎も目覚めてないのに、目覚めた後の最悪のことなんて考えるな。今はお前の体のことをまず考えよう。大丈夫だ、俺も司も、類だって桜子や滋だって、お前のことが誰よりも大事なんだ。ちゃんと、元気になれるよう、2人がまた元気になって笑いあえるよう、俺たちが全力を尽くす。俺たちを誰だと思ってる。な、司。」

「当たり前だ!俺様が絶対に、何があったってお前ら元に戻してやる!だから牧野!まだなんも始まってねぇうちからあきらめて弱音吐いてんじゃねぇ!お前は今あれだ、ほら、心の風邪とかってやつなんだよ。ちょっとまいってて具合が悪いんだ、ちゃんと、俺が治してやる。だから・・・頼むからそんな弱音吐かねぇでくれよ。それならいっそ俺のこと罵倒して怒って怒鳴って殴ってくれよ。な、頼むよ・・・」

俺たちをじっと見る牧野の顔にはなんの気持ちも読みとれない。牧野が俺たちの手元にあるタブレットに手を伸ばす。それを手渡すとそこにはたった一言。

(わかった。ごめんね。)

そんな言葉が聞きてぇんじゃねぇのに。笑ってくれよ牧野。俺のせいだって責めてくれよ。牧野との面会は俺をひどく落ち込ませるのに十分だった。

***
無表情で、自分のことなんて二の次で総二郎を助けてほしいというつくし。
わかるけど、でも・・・司もあきらも、余裕がありません。つくしなら何を考えてるかわかるだけに。
司には『誰も悪くない』って言ってるのに、自分を責めちゃうのがつくしです・・・

『そのまなざしのみつめるさき』は今週で今年の更新は終わりになります。
年内にあと3回お付き合いください。次回は水曜12時です~。