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 『Life is Beautiful』をのぞきにきてくださってありがとうございます。
 しばらくサイトをあちこちさわる予定なので、お見苦しいところもあるかもしれませんが
 ご理解ください。よろしくお願いします。

 現在お話の更新予定はまだ未定となっております。今しばらくお待ちくださいm(__)m

 INDEX

2016.11.11 そのまなざしのみつめるさき 1
そのまなざしのみつめるさき
=プロローグ1 みんなが思う先 SIDEつくし=

大好きな歌があった。特別その歌手のファンだったわけじゃないけど、歌詞が素敵で心惹かれた。こんなふうに2人で生きていこうね、幸せになろうね。そう言って笑って飽きることなく2人でその歌を何度も聴いた。普段は日本の歌なんて聴かない彼も好きだと言ってくれたあの曲を、今はつらくて聞くことすらできない。

いろいろな障害もたくさんあった。でも、それらをあたしの気付かないうちに全部払いのけてくれて、いつも笑ってくれて笑わせてくれて、誰よりも大切にしてくれて、愛してくれた。そんなあの人をあたしも誰よりも愛していた。ううん、今だって愛してる。何があろうとこの気持ちは変わらない。

何が悪かったんだろう・・・わかってる、誰も悪くない。運が悪かっただけ。あれから、あの道明寺が涙ながらに何度も頭を下げてくれたけど、それは道明寺のせいじゃない。類は世界的名医を何人も訪ねてくれたけど何の成果もなく、力になれなくてごめんと謝ってくれた。でも、類が悪いわけでもない。

美作さんは忙しいだろうにいつもそばにいてくれて、泣いてばかりのあたしをただ慰めてくれた。桜子も優紀も滋さんも、何度も会いにきてくれて励ましてくれた。でも気がつけばいつも涙があふれて、いつもみんなで泣いた。頑張って笑っても涙があふれてしまっていた。

お義父様もお義母様も、お二人だってつらいのに何度も励ましてくれて、あの家の何の役にも立たなくなってしまったあたしを大事にしてくれた。このことを決めた時も何度も引き留めてくれて説得してくれた。折れなかったあたしのために妥協案をくださってこんな立派な家をくださったんだ。感謝しても感謝しきれない。

「牧野、ここにいたのか。持ってきた荷物運んだぞ。しっかし・・・お前、荷物あれだけか?あれじゃ冬はどうするんだよ。こっち、かなり寒いんだぞ。冬超すには荷物が少なすぎじゃないのか?」

大丈夫だよと合図すると美作さんはあたしを見てつらそうに笑う。もうずっとこんな顔をさせてしまっていて申し訳ないと思う。でもこれが一番いい選択なんだよ、ごめんね。

「ホントにいいのか?あのままは確かにつらいだろうけどまた新しく始める道だってあるんだ、お前が悪いわけじゃないんだし。あいつだって悪いわけじゃないが・・・お前だって被害者なんだ、お前だけが犠牲になることはないだろう。司も気にしてたぞ、明日こっちにくるってさっき連絡が入った。」

困ったなって顔をするとわかったみたいで同じく困ったように笑って頭を撫でてくれる。

「とりあえず中に入ろう、庭は寒い。今、類が紅茶の準備してるしな。」

類が?大変!と走り出すと後ろからかすかに笑い声が聞こえた。もう、わかってるなら止めてくれればいいのになんでそのまま好きにさせたのよ!キッチンに行くと類がお湯が沸くのを待っててほっとした。この人に紅茶を淹れさせるなんて大変すぎる。大体淹れ方なんて知らないんだから。

「・・・何、その顔。俺だって紅茶くらい淹れられるようになったんだよ。このあいだメイドにちゃんと習ったんだから。そんな心配されるのもなんだか心外なんだけど。待ってて、今日は俺が淹れるから。いっつも牧野にばっかりしてもらうのもなんか癪だし、そんな顔されるとなんかムカつく。」

拗ねたような顔した類を見ておかしくなって笑顔を見せると類も微笑んでくれた。それから類が紅茶を淹れるのを見てて、これなら味はまともかな?って安心してホッとしたような顔をしてしまったのか、類はまた拗ねたような顔になった。あたしの思ってることがわかったらしい。

「それにしても・・・こんなとこにあんた1人で大丈夫なの?まあ、あの夫婦からすれば小さい方の別荘だけど、牧野1人じゃ広すぎるだろうし、掃除とかいろいろ大変じゃない?」

「だよな。使用人、ってわけにはいかなくても誰か通いでお手伝いさんでも雇ったらどうだ?お前の状態じゃ日常生活を送るのはちょっと無理があるだろ?荷物1つ、来客1人にも困るはずだぞ?牧野、やっぱり東京に戻った方が・・・」

首を横に振ると2人は顔を見合わせてため息をついた。わかってる。きっとここで1人で暮らすのは大変だってこと。でもこれ以上誰にも迷惑掛けたくない。これ以上傷つきたくない。これ以上泣きたくない。ただでさえ泣かずにはいられないんだよ、たとえ声が出なくても。泣かずにはいられないんだよ、失ったものが大きすぎて。

その夜、2人はあたしが準備した客間に泊まっていくと言ってリビングで飲み始め、あたしは先に休むと言って自分用の部屋に入った。これからはここに1人。いつ声が出るようになるのかわからない。声が戻っても元の生活には戻れない。そんな日はこないだろう、きっと永遠に。

荷物は片付け終わり、すでに置かれた写真立てを見ればまた涙が出た。この写真を見ると涙を堪え切れない。でも片付けてしまうこともできない、寂しすぎて。

ねえ、会いたいよ。昔みたいにやさしく抱きしめてほしいよ。からかわれて遊ばれたっていい、あたしに笑顔を見せてくれるならなんだっていいのよ。愛する人は写真の中で幸せそうに微笑んでいた。

***
ついに!久しぶりの連載がはじまりました~(^-^)//""ぱちぱち

一応年齢設定としては30ちょっとぐらい。結婚している2人のお話です。
今回はサブタイトルをつけてお話を進めていく予定です。この回なら「みんなが思う先」ですね。
予告はしておりましたが切なくてつらい、そんなお話の予定です。お付き合いくださいね。

次の更新は月12:00の予定です。よろしくお願いします。
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2016.11.14 そのまなざしのみつめるさき 2
そのまなざしのみつめるさき
=プロローグ2 みんなが思う先 SIDEあきら=

ドアが閉まる音が小さく聞こえて類と同時にほっとため息をついてしまい、顔を見合わせて苦笑した。こんなのは間違ってる。誰もがそう思ってるが、じゃあどうすればいいんだと聞かれれば答えようがない。それなら牧野の決めたことに力を貸せばいいんだろうが、それも違うのがわかってるだけに誰も何も言えずにいる。

「・・・それで総二郎はどうなの?相変わらずなんでしょ?」

「相変わらず、だな。ま、昔のあいつを知ってるから俺としては別になんてことはなかったが、牧野はつらかったはずだ。あいつ、同じ屋敷にいても牧野の存在は完全に無視して暮らしてたからな。」

「まだ総二郎に何も話してないの?いくらなんでも話した方がいいんじゃない?牧野だけの問題じゃない、あいつにも関わる問題なんだから。」

「今のあいつに牧野の話したってどうしようもないさ。相変わらず視界に入れるのも嫌って感じなんだ。それに、牧野自身が話さないでくれって懇願してるんだ、そう言われれば俺は何も言えないさ。」

皮肉な運命。そんな言葉で片付けるには重すぎる現実だ。かつて司が記憶をなくした時、付き合ってた牧野は耐えてそばにいて記憶を取り戻したことがあった。だがあの時とは状況が違う。違いすぎる。なんで牧野ばかりがつらい思いをしないといけないのか。仕方ないとわかっていても腹が立つ。

「あきら、牧野に気持ちが傾いたんじゃない?あれだけ一緒にいればわからなくもないけど。」

「おい、俺がそんなバカに見えるか?牧野は常に総二郎しか見てない。昔から変わらず今も一途にだ。それがわかってて牧野を好きになるほど俺もバカじゃない。なんかあまりにも気の毒で・・・何かしてやりたいんだよ。お前だって日本にいれば同じことしただろ?」

「・・・したね。確かにあんまりだよね。なんで牧野ばっかり・・・総二郎のせいじゃない。司のせいでもない。わかってるけどじゃあ誰のせい?なんで牧野だけが泣かなきゃいけないの?残酷だよ、牧野ばっかり。」

この件で司は誰よりも罪悪感を感じて、NYで名だたる医療機関や研究所を買い占めて原因究明と治療法を探させてる。あいつだってまさかこんなことになるとは思ってなかったはずだ。あの日は俺ら全員があまりに幸せそうな2人の様子に多少くやしい気はしたものの、うらやましいと思ってたんだから。

「司、明日こっちにくるんでしょ?俺、全然連絡とってないんだよね。こっちくるのに休み返上でかなり仕事詰めてたから。今回もこんなことになってるって教えてくれてたら早く帰ってきて牧野説得したのに。」

「説得?誰の話にも耳を貸そうとしなかったんだ、無理だ。司にも電話で牧野の件話したら言葉失ってたよ。だが隠しといても同じだからな。こっちにきてもその件で説得しようとするなって話しといたが、あいつのことだからするだろうな。」

「司としては何としてでも2人には元に戻ってほしいだろうからね。もしかしたら総二郎の方に行くんじゃないの?余計なこと言わなきゃいいけどね。あいつ、キレると手が付けられないから全部話しそうじゃない?」

「そりゃヤバいな。総二郎のところには行くなって念押しとくか。まあ、何言ったって今の総二郎には何も届かないけどな。牧野もそれを望んでるし。」

「・・・いったいこれからどうなるんだろうね。ホントに・・・牧野覚悟決めてるの?」

「ああ。おじさんとおばさんも泣いて止めてたけどな。こうと決めたら頑固なやつだ、そうするだろう。まったく・・・総二郎がまともに戻ったら2・3発ぶん殴ってやりたいよ。」

「ホントだね。あいつも大変なのはわかってるけど殴られて当然でしょ。俺も殴ってやろうかな、俺が総二郎を殴る機会なんてこの先もないだろうし。」

2人で顔を見合わせて笑ったがその笑いはうわべだけのものだ。そんなのは類だってわかってる。だが他にどうしようもない。俺らが泣こうが騒ごうが、今の総二郎を殴ってやったとしても何も変わらないんだから。

それから類とただ飲んだ。2人して互いに会社の上に立つ人間なのにこんなところで仕事の話をする気にもなれないし、かと言って昔の懐かしい話をする気には到底なれない。ただ飲んで、ボトルが空になったころそれぞれ客間へと入った。

この数か月、牧野のそばにいてまったく心が揺るがなかったかと言えば嘘になる。あまりに儚くて弱弱しくて、静かに涙を流す姿を見ては慰めるという名目で何度も抱きしめた。だがわかってた。牧野が誰を想っているのかも、誰のために泣くのかも、あいつの気持ちの向く先を全部。

卑怯なことはしたくない。だがもう泣かせないためならこのままどこかにさらって行こうかって気になった時もあった。でも牧野はきっと総二郎なしでは生きられない。元に戻れない。わかってたからできなかった。それに2人には絶対に元に戻ってほしいという強い希望もあった。

「総二郎・・・頼むから正気に戻れ・・・」

そんなことはあり得ないのについ願ってしまう。総二郎だって苦しんでるからイラついてる。わかってるが・・・また幸せそうに笑って見つめ合う2人が見たい。俺らの願いはただそれだけだった。

***
総つくの話なのに総二郎が出てこない・・・でもだんだん状況がわかってきた?
あきらも類もなんだかつらそうですが、その上をいくつらい現状のようです。
が、がんばろう、総二郎!つくし!それにみんな!読んでくださる皆様も!!

つらいかもしれませんが楽しんでいただけるといいなあ(=゚ω゚)ノ


2016.11.16 そのまなざしのみつめるさき 3
そのまなざしのみつめるさき
=プロローグ3 みんなが思う先 SIDEつくし=

女性陣の賑やかな声と美作さんの声がリビングに響いてる。今日、道明寺が日本に戻ってきてここにくると話したら滋さんと桜子が朝から遊びに来てくれた。優紀は小さい子供がいるからこれないとメールがきた。当たり前だ、そこまでしてもらったら申し訳ない。

「先輩、まだお料理終わらないんですか?もうそれくらいでいいじゃないですか、これだけあれば足りますよ。」

「え~、だって司、すごい食べるじゃん。つくしの料理、すごく好きだし。あ、私もう1個ケーキ食べようかな~。ねえ、つくし、もう1個だけいい?」

「滋さん!道明寺さんがきたらみんなでお食事なんですよ!もうケーキはやめてください!」

「それは言えてるな。滋、いい加減食いすぎだからやめてくれ、見てる方が気持ちが悪い。類なんか人間じゃない生き物見るみたいな目でお前のこと見てるぞ。」

「え~やだ~。食べたいのに~。」

賑やかすぎる友人たちの声はこの家の中に響き渡っている。数か月前まではこんなふうにみんなで賑やかに過ごした時もあったのに、あの時とはあまりにも状況が違ってしまってることにふと表情が曇ってしまったみたいで、一瞬みんなが静かになった。あ、気を遣わせちゃった。しまった、どうしよう。

玄関の方で車の音がして男の人の声がかすかに聞こえて、道明寺がきたと思い玄関へと逃げた。みんなの気持ちがわかるだけにあんなふうに大丈夫?なんて目で見られると、こっちの方が申し訳ない気持ちになってしまう。チャイムが鳴るのとほぼ同時にドアを開けると道明寺と西田さんが驚いた顔をしていた。

「・・・なんだよ、驚かすなよ牧野。びっくりしちまったぞ。元気そうじゃねぇか、顔色もいいな。あいつらはもう来てんだろ?おい、西田、お前はとっとと帰れ。俺は今日は完全オフなんだよ。明日からいくらでも働いてやるから今日は全部お前んとこでとめとけ。電話してくんじゃねぇぞ、重要案件はジェットの中で全部サインしたんだからな。」

「仕方ありませんね。本当に今日だけですよ、これ以上は業務に支障が出ます。つくし様、ご無沙汰しております。本日は司様がお世話になりますがどうぞよろしくお願いいたします。何かありましたら私にメールを。すぐに引き取りにまいります。」

「うるせぇ!俺は荷物じゃねぇんだよ!お前はさっさと戻って仕事してろ。おい、牧野入ろうぜ。腹減ったからメシ食わせてくれ。」

「では、明日の朝8時に迎えをよこします。そのあとは覚悟してください、副社長。では、失礼します。」

相変わらずの会話に笑いながら道明寺とリビングに戻ると滋さんが道明寺に抱きついてきて引き剥がされて、なんていつもの光景が繰り広げられ、料理を作り終えてみんなで食事を始めると相変わらず口の悪い道明寺は『こんなの食えるのか?』なんて文句を言いながらも食べてくれる。懐かしい風景。あの人の姿はないけれど。

食事のあと道明寺に話があると言われて庭先のベンチに座った。気にしなくていい、何度もそう言ったけど、ずっと責任を感じて道明寺は何度もメールをくれ会いにきてくれる。NYでの仕事が忙しいはずなのに無理をさせて・・・

「お前、ホントにこれでいいのか?まだ総二郎に何も話してねぇらしいじゃねぇか。いい加減全部話せ。どうせいつかは知ることだぞ。いや、知らねぇとダメだろ。あいつだってあんなに楽しみにしてたんだ、今だって話せばきっと・・・」

腕をグッと掴んで首を横に振ると、道明寺は黙って片手で顔を抱えてしまった。ごめんね、道明寺。でも、今のあの人に何を言ってもムダなの。届くはずがない。それなら知らないでいてくれた方がいい。その方があたしもいいの。

「・・・体はもう大丈夫なのか?定期健診とかちゃんと行ってんだろうな?こっちはまともな病院があんのか?」

首を縦に振ればため息をついて下を向く。そんな顔してほしくないのに。道明寺にこれ以上罪悪感なんて持ってほしくない。あれは仕方がなかったんだ。運が悪かった。だから誰のせいでもない。

「・・・まだ声でないんだな。もう何か月だ?お前・・・俺のせいでこんなことになっちまって・・・俺はお前にいったいなんて言って詫びればいいのか・・・ホントにダメなのか?総二郎のことあきらめたわけじゃねぇんだろ?なんで離れんだよ。そばにひっついときゃなんとかなるかもしれねぇだろうが。」

ごめんね。そう口を動かすとぎゅっと抱きしめられた。道明寺がかすかに震えてる。またこの人を泣かせてしまったかな。もう泣かないでほしいのに。悪いなんて思わないでほしいのに。これはあたしが決めたこと。道明寺は関係ない。

「お~い。そこでラブシーンはちょっとヤバいんじゃないか、司。こんな田舎でもお前のこと知ってる人間はいるんだ、そんなの見られたら即スキャンダルだぞ。牧野、滋と桜子が皿洗いに四苦八苦してる。皿が何枚か割れたからなんとかしてやってくれないか。」

え!ここのお皿、高級品なのに!道明寺の腕からすり抜けて美作さんの隣を通る瞬間、道明寺をお願いね、そう気持ちをこめて視線をむけて、考えるに恐ろしいことになってるであろうキッチンに向かった。

***
まだ続くプロローグ・・・久しぶりにみんな集まっての団らんの場面のはずなのに
重苦しさがつきまとって楽しさも半減、そんなところでしょうか。
司も登場したのに、一番肝心な人は名前のみ。いったい今どこにいるのか?
プロローグはあと1話。そのあとようやく本編に入ります(^▽^;)

次の更新は金12:00です。今のところ月・水・金で更新の予定です。
2016.11.18 そのまなざしのみつめるさき 4
そのまなざしのみつめるさき
=プロローグ4 みんなが思う先 SIDE司=

「やめとけって言っただろうが。相変わらずバカだな、司。いまさら牧野に何言ってもムダなんだよ。言って聞くくらいならとっくに俺が東京に連れ戻してるし、そもそもこんなところになんて来させてない。何度もそう言っただろ?それで泣くなよ、らしくもない。」

「うるせぇ、人の話を盗み聞きするんじゃねぇ。お前、昔っから意地が悪いのは変わってねぇな。」

「俺が意地が悪い?そんなのはじめて言われたぞ。牧野はいつもやさしくて思いやりのあるいい男だって言ってくれるんだがな。ま、好きなように言えばいい。それで?研究所の方はどうだ、成果は出たのか。」

「いや、まだだ。被験者集めて投薬試験中らしい。結果が出るのに時間がかかるんだとよ。早くしろってせっついたらそれなら辞めるとかいいやがって結局任せた。まあ、随時報告はあげるよう言ってあるがな。」

アメリカの医者は扱いにくいことこの上ねぇ。こっちは金出してるってのにわかりもしねぇ専門分野だからどうしたって下手に出るしかねぇし、まったくあんなんじゃいつになるんだ。その前に総二郎と牧野がホントに別れちまったら俺は立ち直れねぇぞ。今でさえ申し訳なくて仕方がねぇのに。

「お前さ、あんまり自分のせいだって思い詰めるな。あれはお前のせいじゃない。大体恨まれたのだってお前の下の人間がやったことでお前がやったことじゃないんだ。お前がそんなに思い詰めてると牧野が余計に気にする。自分より他人、そんなやつなのはわかってるだろ?」

「・・・あの時牧野があそこにいなけりゃ。いや、あの日あそこでメシなんか食わなきゃ。あの時あそこで話なんかしなけりゃ。考えたってどうしようもねぇことはわかってんだ。だが考えちまうんだよ。あの日俺と一緒じゃなきゃあいつらは今も幸せそうに笑ってたはずだ。なのに俺がぶち壊しちまって・・・」

「司。お前のせいじゃない。そんなふうに考えるなって前も言ったはずだ。お前がそんなふうに悩んだってどうにもならないんだ。牧野は現実を受けれて、乗り越えるのは無理だと、もう耐えられないって腹くくったんだ。それを俺らがどうこう言えないだろ?」

「全部奪ったんだぞ?牧野から総二郎も幸せな生活も子供も全部。なのにあいつは俺のせいじゃないなんて責めもしねぇ。」

いつだって申し訳なくて仕方がねぇんだ。あの日、2人の待望の妊娠の祝いをしようと俺も帰国して新しくオープンした系列の店を貸し切って祝杯をあげた。幸せで溢れてた時間だった。それが、一瞬で全部なくなった。なのに牧野は俺を責めもせず笑ってくれるんだ。嫌でも罪悪感感じるだろ。

「司~。ねぇ~、滋ちゃんさ、ちょっと仕事のことで聞きたいことがあるんだけどいいかなあ?ミスターレイデンのこと教えてほしいんだよね。今度うちで一緒に仕事したくて接触計ってんだけどなかなかうまくいかなくてさあ。困っちゃってんだよね~。」

「だとよ。滋のお呼びだ、ほら、リビングに戻るぞ。そんな顔しかできないなら帰れ。お前のそんな顔、牧野が見たら気にするだけだ。」

リビングに戻って類と話しながらキッチンを掃除する牧野を見れば、前に会った時よりもだいぶ顔色はいい。前に会った時はずっとかなりの情緒不安定で食事もとれず何度も倒れたとあきらから聞いて、仕事もったままジェットに飛び乗って会いにきた。その時も今と同じように笑ってたけどよ、あんなのホントの笑顔じゃねぇ。

「司、そんなに気にしない方がいいよ。そんなに司が思い詰めてもつくしが負担なだけだよ。今NYで臨床試験してるんでしょ?うちもやってるからさ、それでニッシーどうにかしてあげようよ。ニッシーがちょっとでもつくしのこと思い出せばきっとここに迎えにきてくれるよ。」

「そう思うか?そんな可能性があると思うのか?」

「司だって昔記憶なくしたけどちゃんと思い出したじゃん。ニッシーの場合はもっと深刻だけど、ちょっとでも、せめてつくしを愛してたことだけでも思い出してくれたらきっとまたうまくいくよ。うちの旦那にも頼んでるからさ、だから元気だしなよ。司がそんなんじゃ滋ちゃんもおもしろくないし~。」

笑う滋に確かにそうかもしれねぇとは思う。総二郎は誰よりも何よりも牧野を大事にしてた。俺がはねのけられなかった外野からの圧力も、全部自分の力と実力ではねのけ納得させて牧野を認めさせた。あれだけの気持ちをかすかにでも思い出せば確かになんとかなるとは思うが・・・

「いい加減にしなよ、司。お前のそんな顔見たくないよ、俺は。俺様な司じゃないと牧野も笑えないでしょ。無理してでも笑おうとしてる牧野の気持ちも考えなよ。牧野が泣いてるとこが見たいわけ?それでなくても1人の時には泣いてるはずなのに。」

誰もが視線の先に牧野の無理した笑顔を見る。笑っちゃいるが寂しそうな笑顔。あんなのは牧野じゃない。だが誰もどうすることもできない。どうにかできる人間は1人だけだ。

「俺が絶対総二郎を元に戻してやる。俺様の辞書に不可能はねぇんだよ。」

それを聞いて笑うこいつらも同じことを願ってんだろう。待ってろ、総二郎。お前を絶対に牧野のもとへ帰してやる。

***
プロローグで何とな~く状況がわかるように書いたはずです(^▽^;)どうでしょう?
スタート4話ですでにもうつらくてしょうがないですが・・・つくしを笑顔にしていあげたい!
総二郎にもホントの幸せを!とは思っていますので・・・どうぞお付き合いください(m..)m

次の更新は月12:00です。やっと本編・・・プロローグから過去へさかのぼります。

明日12:00にちょっとつぶやきのような記事をあげる予定ですのでよかったらよろしくお願いします。
2016.11.21 そのまなざしのみつめるさき 5
そのまなざしのみつめるさき
=幸せの瞬間1 SIDEつくし=

「「「「「おめでとう!かんぱ~い!」」」」」

グラスの音がカシャンと響いて、みんなが一斉にシャンパンを飲み干す。あたしも好きなシャンパン。飲みたいけど、でもいいの、そんなのどうでも。今はみんなが飲んでるシャンパンよりも、あたしは酔っていると思う。“シアワセ”というものに。こんなこと言ったら馬鹿にされそうだから絶対に言わないけど。

「それにしてもほんとによかったな、牧野。半年前に会った時は思い詰めた顔してたから気にしてたけど、今は別人みたいだ。今日はお前がすごい美人に見える。」

「ああ、だな。ヘーボン牧野のくせになんかキラキラしてんな。お前なんかキラキラつけてんだろ。」

「道明寺~いくらなんでもそれはひどいでしょ!お化粧はいつもどおりよ!ヘーボンとか、相変わらずのクルクルがよく言うわよね。」

「お前知らねぇのか?今や俺のこのヘアスタイルを真似したいってやつが」

「そんな奴いるわけないじゃん。司も、幸せだから輝いてるって素直に言ってあげたらいいのに。牧野、ホントによかったね、おめでとう。あんたのそんな幸せそうな顔久しぶりに見れて、俺もうれしいよ。」

「お前らなー、俺の嫁ばっか見てんじゃねーよ。俺も見ろ俺も。俺も幸せでキラキラしてんだろ?」

「お前がキラキラしてたところでなあ。変な女がわさわさ寄ってくるだけだろ。気をつけろよ、総二郎。この時期の浮気は一生恨まれるらしいぞ。」

「そんなことしねーよ!」「そんなことしないもん!」

思わず声をあわせて同じことを言ってしまって、なんとなく恥ずかしいのにそれさえもうれしい。あたしを見て微笑んでくれる総も、今日はいつにもまして楽しそうだ。



総と結婚して『西門つくし』になって4年。次期家元夫人になるために、結婚前から続けてきたお茶のお稽古にお花に生け花、その他もろもろの西門の行事に、総の仕事のバックアップと、家元も家元夫人もまだまだ健在だというのに結婚してから目の回るような毎日だった。それでも結婚できると思ってなかった愛する人と結婚できて、毎日一緒にいられて、お義父様お義母様にもちゃんと嫁と認められて幸せじゃないはずがない、そんな毎日だった。

忙しくても精力旺盛な旦那様は元気いっぱい。なのに・・・なかなか子供ができなかった。2年が過ぎるとさすがに西門の方々からもどうなっているのかとの声があがるようになって、気にしなくていいと言ってくださるご両親や総に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。ずっとずっと悩んで苦しんで、何が悪いわけでもないのに妊娠できない自分が悪いんじゃないかと思い詰めて・・・笑顔の裏でずっと苦しかった。

『別にガキが欲しくてお前と結婚したわけじゃねーし、できなきゃできないでなんとでもなるんだ、気にすんな。俺はお前がいればそれでいい。』

そう言って抱きしめてくれる総に何度弱音を吐いて苛立ちをぶつけて泣き言を言ったことか。それでも総はブレなかった。子供はお義兄さんのところからでも義弟さんのところからでも一門からでも養子にもらえばいい、俺はお前がいればいい。お前がここにいたくないってなら俺も出ていく。そんなことを言って、あたしだけでいいんだと、そんなに気負わなくていいんだといつもそばで支えてくれた。

数か月前の結婚記念日、滅多にないことだからと総がバリに1週間の旅行に連れて行ってくれた。2人っきりの、誰にも邪魔されない幸せな時間だった。仕事を調整しまくった、とあとで聞いて、ジェットは道明寺に借りて、バリのコテージは美作のリゾートを貸し切って、大量のフルーツとお酒は類からだと聞いて、ああ、あたしはすごく幸せだなって心から思えた。総を心から愛してる。総に心から愛されてる。みんなに愛されてる。そう思えた。

そして帰国してから、ずっと鬼のような忙しさの中のつい1か月前。あたしはめまいがしてお稽古中に倒れてしまった。ちょうど総も一緒で、あわてて病院に行ったら・・・

「おめでとうございます、おめでたですね。」

はい?お医者様の言う言葉がよくわからなくて、聞き返してしまった。隣にいた総も、驚きすぎたのか固まったようになっていて・・・何度も先生に聞き直して確認して、2人で抱き合って泣いた。忙しくて、あの旅行でガチガチにこわばっていた何かがなくなったせいで月のモノが不定期になってるなあとは思っていたけど。まさか妊娠してるだなんて。

「安定期に入るまで、お前絶対安静。仕事全部キャンセルな。」

なんて喜んで浮かれてた総。さすがに全部キャンセルはできなかったけど仕事はだいぶゆっくりになって、この前ようやく優紀や桜子にお祝いしてもらった。そして今日、道明寺が日本上空を通過するついでに日本に寄るから(!)というので、みんなが集まってお祝いをしてくれることになったのだ。滋さんは急きょこれなくなってしまった。

総もなんだかんだ言いながらいつもより楽しそうであたしもうれしい。心配してくれてた皆も、ホントによかったねと心から祝ってくれて・・・本当に幸せだった。幸せすぎて、あまりに幸せで。神様が落とし穴を用意してるなんて思いもしなかった。

***
久しぶりのF4+つくしです。総二郎とすでに結婚しているつくしの、待ちに待ったおめでたいお話。
F4も当然喜んでくれてます。幸せの瞬間、です。
そういえば、やっと総二郎がしゃべってる気がする(^▽^;)

今回のお話を読んで人によってはご不快な思いをさせてしまうかもしれませんが、ご了承ください。
2016.11.22 新婚な2人のとある1日
本日は11/22いい夫婦の日~キャーゞ(^o^ゝ)≡(/^ー^)/"""パチパチ
向日葵にはまったく関係ないですが、今連載中の『そのまなざしのみつめるさき』の2人は夫婦ですから。
とっても切なくてつらい2人の、幸せな?ほのぼのイチャラブな1日をちょっとだけのぞき見w
ホントなんてことないお話ですが、ふふふっと笑っていただければと~~~

***

「ん・・・総。おはよ。」

「ああ、おはよう、つくし。大丈夫か?体。」

「もう・・・バカ。手加減してよ。」

「手加減したぞ、多少な。」

チュッとその頬にキスをしてぎゅっと抱きしめれば、つくしの温もりにホッとする。昨日の夜、ちょっと久しぶりだったのもあってヤりすぎた感はあるが・・・ま、新婚だし許してくれ。つくしもちょっと困った顔をしてるが、顔色は悪くない。大丈夫そうでホッとする。

「今日、確か西門の奥様方との会合だろ?」

「うん。はじめてだから、ちょっと緊張するよね・・・」

さわさわとつくしに触れながら、今日の予定を思い出す。結婚して1カ月。まだつくしには慣れないことが多いだろうがよくやってくれてる。西門での評判も上々だ。

「大丈夫だろ、お前おばさん連中には好かれてるしな。」

「そんな、もう・・・ちょ、ダメだよ。もう起きなきゃ。」

俺の手が何を意図してるのか感づいた新妻は、ダメダメといって俺の手を遮る。まあ、そんなことされっと余計その気になっちまうんだけどな。

「大丈夫だ、まだ時間ある。1回だけ、な。」

「あっ・・・」

そう言ってちょっと強引に、今度はやさしくと思いつつ朝から・・・





それから数時間後。つくしは家元夫人と一緒に出掛けて行き、俺は事務所で打ち合わせをしていた。そんなところにかかってきた電話は家元夫人からだった。つくしに何かあったのかと電話に出てみれば、若干呆れたかのようなため息が聞こえてきた。

「あの?つくしに何かあったのですか?」

まわりには下の人間がいる。それとなく電話の向こうにお伺いを立ててみるが、どうも家元夫人は機嫌が悪いらしい。おかしい。つくしと付きあうようになってからこの人との関係もかなりよくなったと思ってたんだが。

『総二郎さん。あなた、“ほどほど”というお言葉をご存じないのかしら。』

「はい?それはいったいどういう意味ですか?」

意味が、まったくわからない。

『まったく、私が先に気付いたからとっさに対応できたものの、あのまま皆様の前に出ていたらつくしさんが大変恥ずかしい思いをするところでしたよ?いくらつくしさんの目に入らないとはいえ、多少は女性の都合も考えて差し上げないと、女性には女性の、いろいろと都合というものがあるのです。』

「あの、家元夫人。申し訳ありませんがおっしゃってることがよくわからないのですが。」

『まだ新婚のあなたに加減なさいなんて野暮なことを申し上げるつもりはありません。ただ、あれではつくしさんが恥ずかしい思いをなさると申し上げてるのです。』

「ですから、いったい何のお話なのか・・・」

『キスマークです!』

「は?」

その声があまりに大きかったせいもあり、周りが静まりかえっていたこともあり、どうもまわりに聞こえてしまったらしく、まわりにいたやつらの顔がえっと俺を見たまま固まってる。俺も、仮にも母親がいったい何の話をしてるんだと返す言葉もない。

『本日は西門の奥様方とエステだったのです。皆様裸になられて、さあ全員でマッサージ、となった時に私がつくしさんの背中に気付いたからよかったものの!あなた、見えない場所にならいくらでも、なんて思ってらっしゃるのかもしれませんけれど、西門にいる限り着替えなどで人様に肌を見せることもあるのです。もうちょっと考えてお付けになったらどうなの。』

「は、はあ。」

『新婚ですもの、大変結構なことですけれど。もう少々つくしさんのことを考えて差し上げた方がよろしいわ。わかりましたね。』

「え、ええ、わかりました。」

『では。』

電話を切られた後、何とも微妙な空気がそこには流れていた。

「で、では、先ほどの続きですけれども・・・」

その日、俺はなんとも気まずい空気のまま1日を過ごすことになった。





その夜。

帰ってきたつくしに今日の婦人会は何をしたのか、と聞いたところ、ご婦人方とエステに行きサウナに入って食事をし、日頃の疲れを癒すための慰労会だったと話してくれた。西門の重鎮の奥様方ともなればいろいろと気苦労も多い。それをねぎらう為に家元夫人が毎月エステだのなんだのに招待して息抜きをしているらしい。なるほど。

「マッサージがすっごく気持ちよくてね、ついうとうとしちゃった。でも、人数が多かったみたいで私だけ別室でね、奥様方とあまりお話しできなくて残念だった~あ、でも皆さんお食事の時はすごく気さくに話しかけてくださって、緊張したけどすごく楽しかったよ!」

そんなこと毎月やってるなら家元夫人のいうように多少考えた方がいいんだろう。親にあんなこと指摘されるのはさすがにもうごめんこうむりたい。気まずすぎる。

「確かに、いつもにまして肌がつるつるだな。」

「でしょう!来月はね、って。え?あの、総?」

パジャマのボタンを外しだした俺に、え?っという顔をするつくし。

「その肌、俺も堪能してーし。」

「こ、今夜も?」

「当たり前だろ。」

おいしそうな妻を前に我慢する気なんて毛頭ない。

「大丈夫、ちゃんと考える。」

「???」

わかってないつくしにキスマークのことなんて匂わせもせず、俺たちはそのままベットへともつれこんだ。さて、今夜はどこにつけようか。

***
新婚さんならあるある?なお話でしょうか?
まあ総二郎ならね~張り切って頑張ってそうなのでありえそうなお話でしょうかね("▽"*) ♪
『若宗匠たちラブラブだな~』なんて西門の皆さんに思われつつ、この夫婦は働いてると思われますwww

こんなほっこりラブラブな日もあったんだよ、それをいつか取り戻してあげたい、と思いながらも
『そのまなざしのみつめるさき』は進んでいきます。お楽しみください♪
お付き合いありがとうございました。明日はまた連載の更新があります~~~
2016.11.23 そのまなざしのみつめるさき 6
そのまなざしのみつめるさき
=幸せの瞬間2 SIDEつくし=

「つくし大丈夫か?無理しねーできつかったら言えよ、無理して食べなくてもいいからな。」

あたしの背中に手を添えて、こっそり話しかけてくれる総。つわりはほとんどないけどちょっと疲れやすくなってるあたしの体調を気にして気遣ってくれるのはいつものことだ。

「大丈夫だよ。お腹空いてるし、今日はお仕事も午前中だけだったから疲れてないし。」

「ん、ならいいけどな。無理すんな。」

そっとあたしの手を握ってぎゅっとしてくれる。もう何年も変わらない総のその仕草が、あたしは何よりも好きだったりする。お前が大事だよってこっそり言われている気がして。

「今日は牧野のための食事だからな。ま、無理しねぇで食えよ。」

みんなとは違うコース料理が運ばれてきて、なるほど、そうなのか、と思ってしまった。このお店は道明寺財閥が新しくOPENさせるお店だそうで、まだOPEN前なのもあって今夜は貸し切りだ。道明寺が言うには椿さんのプロデュースで世界中の体にいい食材を使って展開してるレストランの日本支店なんだそう。今日のあたしのためにと、NYにいる椿さんと滋さんが妊婦のためのメニューを考えてくれたらしい。ありがたいなと思う。

「それで牧野。お前どっちが欲しいんだ?男?女?」

「えー、そんなのどっちだっていいよ。元気だったら。あ、総に似た女の子はダメ。絶対ダメ。」

「なんだそれ。俺に似た娘なんて超絶美人でかわいーに決まってんじゃねーか。」

「総二郎みたいなビッチになったら困るからでしょ、牧野。」

「うん。類正解~。」

「俺の娘にそんなことさせるわけねーだろ!」

まだ生まれてもないのにもう親バカか、なんて美作さんが笑う。道明寺が娘なら俺が嫁にしてやる、なんておそろしいことを言って、総が本気で嫌がってた。俺も、牧野の娘なら結婚してもいいよ、なんて笑う類の笑顔が黒いと言ってみんなが笑うのに総だけはおもしろくない顔をしてて、それがまたおかしいと笑う。とにかくずっと笑って笑って、楽しくて、ディナーも最高においしくて楽しい時間だった。

なかなかこんなふうにみんなで集まれることはない。総以外はほとんど日本にいることがないくらい忙しい。今回は道明寺がいつものごとく無理言って帰国してくれて、それにあわせて類と美作さんも帰国してくれた。本当にありがたいけど、たぶん隣室で控えてる秘書さんたち大変だっただろうなあと裏方の苦労もここ何年かでわかってきたあたしとしては申し訳なく思ってしまう。でもこんな時間を過ごさせてくれて本当に秘書さんたちにも感謝だ。

「あ、実は俺な、当分日本にいるんだ。どうやら俺がベビーの顔を一番に拝むことになりそうだな。」

食事を終えてワインを飲みながら美作さんが思い出したように話す。

「お、あきら。仕事日本になるのか?」

「ああ、親父がお袋と一緒にニースに行きたいって言っててな。入れ替わりで俺が当分日本で社長代行だ。」

最近美作さんのお母様が体調を崩されてるとはお義母様から聞いていたけどあたしは何も言わず話を聞いていた。みんなも状況は知ってるのか、そうか、とだけ返事をする。

「あきらが帰ってくるならいい子守ができるな。お前、4・5年日本にいろよ。で、うちの子の子守しろ。そしたらお前もいい加減結婚したくなるだろ。」

「冗談よしてくれ、ただでさえお前が結婚してるのにってどうして俺は、ってうちの両親から冷たい目で見られてんだ。今回本社の副社長として戻ってくるのに社長代行もだぞ、忙しいのを言い訳に結婚はまだって逃げてるんだからな。日本で子守なんてしてるってうちの親にバレたら、それこそ誰でもいいからって縁談決められる。」

苦笑いの美作さんはため息をついてるけど、まあ美作さんに限らずあたしの前にいるクルクルパーマも相変わらずの王子様も状況は似たようなものだ。

「ま、お前らの“牧野”を俺がもらったからな。せいぜいいい女探してさっさと結婚しろよ。」

あたしの頬にチュッと見せつけるようにキスしながら、総は嫌がらせのように3人に微笑んだ。もう、またそんなこと言って、なんてあたしの声は届かない。まあこれもいつものことだし。

それからお互いの近況をたくさん話した。椿さんの息子さんが道明寺に懐かない、なんて話を聞いたり、美作さんの双子の妹さんがどちらも恋人ができて、お父様の美作社長はがっくりと肩を落としてる、とか、類は最近イギリスで仲のいい社長さんから「恋人になってほしい」と言われてちょっとびっくりしたなんて話まで。ちなみに類に告白した社長さんは類より14歳上の男性だそうで、みんなで興味津々で聞いてしまい、類からすごく嫌な顔をされた。

「牧野、体調には気をつけろよ。今日はいつもみたいにしっかり食ってたけど、いつつわりがはじまるかなんて人それぞれだからな。」

あたしを思いやってくれる美作さんの言葉もあたたかい。あたしの隣を譲らない総に邪魔だのなんだのと道明寺がいいながら、ディナーはお開きになった。外に出てみんながもう少し飲もうとか話してる横であたしは類からプレゼントをもらって・・・

ホントに楽しかった。幸せだった。その瞬間までのあたしたちは。


***
とても幸せな、総二郎とつくしを囲んでの食事。
久しぶりに帰国してみんなで集まれて、F4もこの時間を楽しんでますね。
次回は連載始まってはじめての、SIDE総二郎。やっとだね、総二郎登場です。
とっても幸せな気持ちの総二郎が登場です~~~が・・・
2016.11.25 そのまなざしのみつめるさき 7
そのまなざしのみつめるさき
=幸せの瞬間3 SIDE総二郎=

「え~そうかなあ、そんなことないよ。相変わらずドジしちゃって怒られることもあるし。」

つくしの明るい声が聞こえる。少し離れたところで類と話すつくしの笑顔は、ホントに輝いてる気がする。幸せそうで、内面から光ってる。まさにそんな感じだ。

「・・・総二郎、別に類がとって逃げるわけじゃないんだ、心配するなよ。」

「あ?別にそんなんじゃねーよ。」

つい、あきらと司との話は右から左でつくしに見入っていた。類から何かもらったんだろう紙袋を、大事そうに抱える俺の嫁はホントにきれいだ。ま、いつもだけどな。

「で?司、大丈夫なのかよ。仕事おしてんのか?西田さんは?」

「西田のやつ、待機中のジェットで仕事してるってよ。朝まで飲んでくるって言ったらあのヤロ『想定済みですのでどうぞ』だとよ、ふざけてやがる。」

「相変わらずだな、西田さんも。お前のいい嫁じゃないか。」

「あんな能面じじいと毎日一緒にいてみろ、行動パターン読まれてなんもできやしねぇよ。ま、仕事はあいつ以外に任せられねぇけどな。」

笑う司とあきらを見ながら、懐かしいな、と思う。クソ忙しいこいつらが合間をぬって日本に戻ってきてくれたのは、たった1人のためだけだ。やっと昔のように笑うようになった俺の嫁のため。



結婚してからずっと、つくしは子供が早く欲しいと言っていた。西門の爺どももそれを期待してるのはわかってたが、俺は正直別にどっちでもよかった。やっと手に入れて名実ともに俺だけの女になったつくしを、自分のガキとはいえ共有したくはないなんてダサいことをいう気はなかったが、まあそれも理由の1つだったかもしれない。

だが、つくしにかかるプレッシャーは相当なものだっただろう。どこに行っても「お子さんはまだ?」と聞かれる。上からも病院に行けだのなんだのとせっつかれて、かなり精神的にまいってた。うちの親には俺の気持ちは話してたし理解も得てたが、そうそう物わかりのいいやつなんか西門にはいない。ただ俺は大丈夫だ、絶対に何があっても俺だけはそばにいる。そう言ってつくしの心に寄り添うしかなかった。

なんの原因もないが子供ができないなら体外受精を、なんて言いだしたつくしにそこまでしなくていいと話して、あとは自然に任せよう、そんなことを話してた矢先に妊娠が発覚した。話を医者から聞いた瞬間、生まれてはじめてうれしいとかの前に頭が真っ白になった。自分が親になる、そんな姿を一度も想像したことがなかった。温かい家庭とか、そんなもん知らない俺が、まともな親になれるのかとか考えたこともなかった。

『総、あたし・・・どうしよう・・・赤ちゃんいるって・・・ウソみたい・・・』

隣で笑い泣くつくしを見て、じわじわと実感した。親になるのか、と。なれるのか、とかそんなのどうでもよかった。つくしが、俺が愛した女が俺の子供を産んでくれるのかって、なんかわけわかんねー気持ちが押し寄せてきて、2人で抱き合ってわけわかんねーこと言って喜びまくってた。

やっと安定期に入ってこいつらに話したら、ソッコー帰ってくる手はずを整えやがった。それだけこいつらもつくしと俺のことを気にかけてくれてたってことだろう。



「メープルの部屋空けさせた。朝まで付き合えんだろ、あきら。総二郎、お前もこい。」

「ああ、久しぶりだしな。」

そんな話をして、こいつらとの久しぶりの再会をまだまだこれから楽しもうとしてた、その瞬間だった。

―――バンバンバンッ!

「っ!牧野!」

後ろを振り向いた瞬間、つくしと類が倒れ込むのが見えた。つくしを支えようとした類は、またバンバンッ!という音とともに崩れ落ちる。遠くに俺たちに銃口を向ける男が見えた。

「つくし!」

つくしの元に駆けよるあいだにも、耳慣れない音が聞こえる。体にひどい痛みが走り熱くなったのを感じたが、そんなのどうでもよかった。

「つくし、おい、しっかりしろ!」

「そ・・・お腹が・・・」

腹部を赤く染めたつくしが、痛みに顔をゆがめる。着ていたワンピースに、赤いしみが二か所広がっていくのが見えた。

「大丈夫だっ!大丈夫だ、俺が絶対助けてやる!」

俺の腕をつかむつくしの手が震えている。大丈夫だ、そう言い聞かせてつくしを抱きしめた瞬間「バンッ!」と一番大きな音が耳元で聞こえた。

「総二郎!」「西門様!」「総っ!」

どこかでそんな声が聞こえたが、何も考えられない。体が、自由を失ったように崩れ落ちていく。

「やだっ、総!総、しっかりして!誰か!」

ひどくゆがんだつくしの顔が見える。俺の女が泣いてる。誰だ、泣かせてんの。俺の女を泣かせてんじゃねーよ。お前も、泣くんじゃねーよ。せっかく今日はキレイなのに台無しだろ。

「西門様!おいっ!救急車だ、急げ!人ごみを遠ざけろ!西門様、しっかりしてください!」

「総!やだ、目を閉じないで!総!お願い目をあけて!」

つくしの声が聞こえるが、なんかやたらとまぶたが重い。なんか大事なものが流れていってる気がする。どうしたんだ俺・・・俺・・・目をあけていたいのにそれもできない。

そのまま、つくしの泣き叫ぶ声を聴きながら、俺の意識は暗闇の中へと落ちていった。

***
はじめての総二郎登場でしたが・・・ご、ごめんなさい(m´・ω・`)m
しかも総つくのお話でありながらしばらく総二郎の登場はありません。
まあ、こんな状態なので・・・登場できないんです。
そして、次回からしばらくかな~り暗いです。重ね重ね申し訳ない(;^ω^)

11/27に12月からの更新予定等お知らせをさせていただきます。ご覧ください☆彡
2016.12.05 そのまなざしのみつめるさき 8
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ1 SIDEつくし=

―――――総、行かないで、総。あたしをおいていかないで、そ・・・

「・・・う・・・」

「っ!つくし!?目が覚めたのつくし?」

ひどく重い頭のまま目を覚ますと、見えたのはママの顔だった。ひどく青い顔。それに、独特のこの匂いは・・・

「・・・ここ病院?・・・なんで・・・?」

「姉ちゃん、大丈夫か?俺、先生呼んでくるよ。」

一瞬見えた進の顔も顔色が悪かった。なんで・・・

「つくし、大丈夫よ。まだ動いちゃだめよ、今お医者様がくるからね。」

涙ぐむママの顔を見ながら頭に浮かんだのは・・・血の色だった。

「ママ、総は?総はどうなったの?総、あたしをかばって・・・生きてるよね?大丈夫だよね?」

遠くから銃口を向けてきた男の人。最初の数発はその人から一番近かったあたしと類に当たった。ホントならいつもはそれぞれの家のSPがたくさんいただろうけど、場所が人通りの多いところだったし急な帰国でみんな明日には日本を去るからか、いつもよりSPさんの数も少なかった。あたしたちの少し離れたところを通り過ぎる人ごみの中からの発砲に、歩いていた人たちもパニックになって犯人を取り押さえるのに時間がかかってしまった。

「つくし、総二郎さんは大丈夫だから、とにかくあんたも安静にしとかないと。動いちゃだめよ、今お医者様くるからほらじっとして。」

起きあがろうとするあたしを押さえるママは慌てていた。でも、あんなの・・・大丈夫なはずがない。撃たれたあたしをかばうように抱きしめてくれた総も、肩のあたりが真っ赤に染まっていた。それに・・・

「ホントに大丈夫なんだよね?だって総、頭を・・・頭を撃たれたのに・・・あたしをかばったせいで・・・」

「つくし、落ち着いて。」

たぶん、いや、確実に総の後頭部に弾が当たった。総は崩れるように倒れて、見まわしたあたりも悲惨な状況だった。SPに囲まれた道明寺も美作さんも倒れ込んでいたし、類も意識がなかった。犯人は銃を両手に持って暴れまくって、SPの人たち数名が撃たれながら取り押さえて、通行人も何人も倒れていて悲鳴と遠巻きに見守る人で大混乱と化していた。

あたしを抱きしめながら倒れた総の頭部の後ろには血の海が広がっていた。ただ怖くて、総の命が流れ出ている気がして手が震えた。あたしも痛かった。痛くてたまらなかった。でも、あたしの大事な人が、目の前で大事な命が消えるかもしれない瞬間を見ていることしかできない自分が・・・

「・・・ママ、赤ちゃんは?」

「・・・っ、つくし・・・」

「あたしと総の赤ちゃんは・・・どうなったの?あたしたちの赤ちゃん・・・」

「つくしさん!」

見たこともないくらいひどい顔色でやつれたお義母様が、白衣を着たおじさんと看護師と一緒に病室に飛び込んできた。

「お義母様、あたし・・・総はどうなったんですか?赤ちゃんは?あたしと総の赤ちゃんは?大丈夫ですよね?2人とも、みんな大丈夫ですよね?」

「つくしさん、今は何も考えないで・・・総二郎も頑張ってるわ。だから・・・」

「若奥様、まだ起きあがられてはいけません。まだ安静に・・・」

「あたしの赤ちゃんは?どうなったんですか?総があんなに楽しみにしてくれてたのに、あたしの赤ちゃんは?先生!大丈夫だって言ってください!ねえ、ママ!お義母様!あたしの・・・」

「西門さん、落ち着いてください!」

あたしの肩を押さえる看護師さんたちでさえあたしと目を合わせようとしてくれない。誰も、誰も、あたしに大丈夫だと言ってくれない。あたしの赤ちゃんは無事だと言ってくれない。嘘だ!嘘だ!!!

「総!やだ!総!あたし、総の赤ちゃん産むんだもん!離して!」

「つくしさん!」

暴れるあたしの肩に手を置いて、泣きはらした顔であたしを見つめるお義母様は、ゆっくりと、言葉を発した。

「つくしさん。いい、赤ちゃんはね・・・あなたの赤ちゃんは、あなたを助けてくれたの。だからね、もう、赤ちゃんは・・・」

「いや!嘘!ウソ!聞きたくない!そんな嘘聞きたくない!総!総!」

「おい、鎮静剤を!」

どうしてどうしてどうして!あたし、何も悪いことしてない!あたしはただ、あたしは・・・混乱する頭では何も考えられなくて、気がつけば意識が遠のいていった。





―――ふわふわのたんぽぽの綿毛が飛ぶ、きれいなお花畑。気がつけばそこにいた。でも誰もいない。あたしだけだった。

「総!」

『大丈夫だよ。』

どこかからか声が聞こえて、目の前には小さな蝶がひらひらと飛んでいる。

『大丈夫だよ、心配しないで。』

その蝶が話しているように聞こえた。

『大丈夫。ちょっと遅くなるけど、すぐに会えるよ。』

「誰と?赤ちゃん?それとも総?あなたが、2人を連れいていっちゃうの?」

『そんなこと、しないよ。』

「お願い。あたしはどうなってもいいの。だから総を、赤ちゃんを助けて。」

『これからきっとつらいよ。でも耐えたら、耐えられたら、きっといいことがあるから、待ってて。』

「待って!どういうこと!2人を助けてくれるの?」

『ごめんね、これが精一杯だったんだよ。』

「待って!」

『でも、あなたなら大丈夫だよ・・・ママ・・・』

蝶は空の彼方へ消えてしまった。

***
ああ、つくし・・・ごめんね、ごめんよ。と思いながら書いてました。
こんなにつらい思いをさせてしまってるけど、だからこそ幸せになってほしいし
幸せにしてやるぞ!と思いながら・・・でも読んで不快な思いをされる方もいたかと思います。
申し訳ありません。しばらくはホントけっこうつらいかもしれない・・・

次回更新は水曜12:00です。
2016.12.07 そのまなざしのみつめるさき 9
そのまなざしのみつめるさき
=壊れた幸せ2 SIDEつくし=

「・・・現状としましてはまだ意識は回復していらっしゃいませんが、数値的には非常に安定しておりますのでもう少し様子を見るべきだと思っています。外的刺激には反応を示されてますので、脳の傷ついた部分も順調に回復しておられると・・・」

先生の、総の状況を話してくれる声がとても遠くに聞こえる。病院で目を覚ましてから、あたしは総のことも亡くしてしまった赤ちゃんのこともなかなか受け入れることはできなかった。あたしのせいで、あたしのせいで。ずっとその言葉が頭をよぎる。あたしを守ろうとして傷ついてしまった総。あたしが傷ついたせいでいなくなってしまった赤ちゃん。あたしは2人に謝りたいのに、今はそれをすることさえできない。

「まだ若奥様も回復されてらっしゃいませんから、今日はこのくらいにされた方が。じゃ、病室にお連れして。」

目が覚めてから半狂乱で連れてきてもらった総のいる集中治療室。何度きてもあたしはそのガラスの向こうに入ることさえできない。今のあたしは腹部損傷がひどくて1人で歩くことさえままならない。いつの間にか撃たれてた左腕は、固定されてて思うように動かすこともできない。あれからもう3週間。まだ、総は目覚めてくれない。

「つくしさん、大丈夫だ。総二郎はそんなヤワなやつじゃない。私たちをこんなに心配させて、目が覚めたら怒ってやろうじゃないか、一緒に。なあ?」

車いすのあたしの目線にあわせてしゃがんでくださったお義父様のやさしい言葉に、ちょっとだけ頬が動いた。それを見てまわりがホッとする空気を感じた。・・・心配をかけてしまっている。あたしも。





あれから、自分の状況を受け止めることができなかったあたしは、今考えても誰が見ても心配になるくらい頭がおかしくなってた。自分が死んでしまいたかった。あたしが総に代わってあそこに横たわりたかった。なのにあたしは何もできない。

検査をして検査をして検査をして、なのにその結果は誰も教えてくれなかった。だからあたしはお医者様に言ったのだ。あたし自身のことはあたしに話してほしいと。総のことも妻であるあたしが知るべきことだと。それは周囲が止めようが口止めしようが、あたしが知らなくてはいけないことだからと。

お医者様は両親と義両親とかなり話し合いを重ねたようだ。でも、あたしから4人に頼み込んだのもあって先生はそれから検査の結果をすべて話してくれた。

総は・・・やはり脳に被弾して損傷していた。手術で弾は摘出したけど、ケガをしたところが脳だから目が覚めてみないとホントにどうなるのかはわからないとのことだった。だけど、外的刺激には反応をしてるから、手足のマヒはないのではないか、とのことだった。あとは、総も右肩に被弾していたけど、そこは今のところ問題ないらしい。

そしてあたし。内臓損傷してしまったあたしは、今回流産をした。内臓は今のところ順調に回復しているようだけど・・・可能性として、だけど、今後の妊娠は難しいかもしれない、と言われた。卵巣も1つ傷ついてしまい、卵子を作ること自体が難しくなっているらしい。あたしの左肩も問題なく回復しているし、今後についてもあくまでも可能性だから今はあまり気にしなくていいと言われた。言われたけど・・・

きっと、かなり深刻なくらいに妊娠できない状況なんだろうということはなんとなくわかった。お医者様はすごく上手に誤魔化してくれていたけど、同じレベルをうちの両親に求められるはずもない。そうか、だからパパはあまり病院にはこなくて、ママはしょっちゅう涙ぐんでたのか、といまさら理解した。





―――少し1人になりたい。

そう言ったあたしをみんな心配そうにしながらも1人にしてくれた。1人になったあたしは・・・泣くしかできなかった。ただ泣いた。なぜ、どうして、なんで。いろんな疑問符が頭に浮かぶけど、どれも答えなんか出るはずもない。あたしは・・・そんなあたしが、こんなあたしが、これからも総の元にいられるはずがない。総を、西門の大切な未来をあたしが傷つけてしまった。総の大事な、西門の大事な跡継ぎを、あたしはもう産むこともできないかもしれない。

どれくらいそうしていたんだろう。真っ暗な部屋には淡い月の光が差し込んでいて、それがあたしの手を照らしていた。

「(そう・・・え?)」

総。そう声に出したはずだった。あたし、耳までおかしくなってしまったんだろうか?総?総?あれ?何度も声を出すのに聞こえない。でも・・・遠くで車が走る音は聞こえている。まさか・・・あたしがしゃべれてないの?声が出てないの?

手探りでベッドサイドのスマホを手にとった。確か、そう、確かスマホにボイスレコーダーを入れてたはずだ。ONにしてスマホに向かって大声を出してみる。何も聞こえない。その録音した音を再生しても・・・何も聞こえなかった。

は、ははははは・・・声が、出ない。あたし、もう声も出なくなった。ははははは・・・泣きながら笑っても何の音にもならない。あたし、あたしは・・・どうしたらいいの?ねえ、どうしたらいい?そう尋ねたところで答えてくれる人は当然いなかった。

***
あれから3週間。総二郎はいまだ目覚めず、つくしにはついに真実が語られ・・・
自分が、自分のせいでと思い詰めてしまったつくしは、結果として声が出なくなってしまいました。
つくし・・・ごめんね。 次回は今回の件で誰よりも自責の念を感じている人です。

金曜12:00更新です。