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 『Life is Beautiful』をのぞきにきてくださってありがとうございます。
 しばらくサイトをあちこちさわる予定なので、お見苦しいところもあるかもしれませんが
 ご理解ください。よろしくお願いします。

 現在お話の更新予定はまだ未定となっております。今しばらくお待ちくださいm(__)m

 INDEX

2016.12.28 懐かしのこの場所で 1
懐かしのこの場所で

俺たちには懐かしい場所。なんたって出会った場所なんだから当然だ。だがこの光景はデジャヴか?

「・・・ある意味、圧巻、だね、総。まだF4の名前は伊達じゃないんだ。」

確かに。もう卒業して何年もたつってのにいったいこりゃまた・・・

「お待ちしておりました、西門様。本日はよろしくお願いいたします、ではこちらへどうぞ。」

わざわざ学園長のお出迎えにつくしは相変わらずぺこぺことあいさつ。どこを見ても何一つ、俺らがいたころと変わってない英徳学園高等部。正面玄関入口には人の山。何が悲しくてこんな日に、と思ったが仕事の依頼だから仕方がない。

俺の誕生日につくしと過ごしたくて『この日は仕事はいれない』と前々から言ってたが母校からの仕事の依頼にNOといった俺とは対照的に『引き受けて!』と意気込んだのはつくしだった。理由は『久しぶりに行ってみたい』なんて理由。確かにこんな事でもなけりゃ行くことなんてないからな。

「きゃ~西門様~」「やだぁ~カッコいい~素敵~」「きゃ~こっち見てぇ~」

「・・・アイドル並だね、総。女の子の黄色い声しか聞こえないんだけど。どこみても女の子しかいないし。相変わらずもててうれしいでしょ?」

「こんなガキどもにきゃあきゃあ言われて俺が喜ぶとでも思ってんのかよ。ったく、うるさくて頭が痛い。」

「はははっ、そりゃ痛くなるよ、すごい声だもん。あたしなんて視界の端にも入ってないんだろうね、この子達。昔に戻ったみたいで感慨無量?涙が出ちゃうって感じ?」

入り口玄関からずっと続いてる女たちのアーチときゃあきゃあわめく声。確かに昔こんなのは毎日のことだったが、今この年で高校生の女にきゃあきゃあ言われたってうれしいはずがあるか。俺以上にこの状況を楽しんでるつくし。懐かしがるな、こんなのを。

「では、お時間までこちらでお待ちください。あとで生徒代表があいさつにまいります。」

控室に通された俺とつくし。今日は講演の依頼があり、そのあと茶を点ててほしいと言われつくしを連れてきた。2人で約2時間の茶道教室。『そんなのが必要あるようなやつらじゃない』と何度も言ったが俺よりも先につくしが返事をして引き受けちまったんだから仕方ない。

「うわ~、こんな部屋があったんだね。あたし、こんなとこ入ったことなかったよ。あ、あそこの建物なんだろ?新しい校舎かな?ねえ、まだラウンジとか変わらないと思う?非常階段とか中庭とかそのままかな?あとでちょっと見る時間くらいあるよね?」

こいつは仕事のことなんて頭からすっ飛んで懐かしい母校訪問ってのに夢中になってる。まあ、世間は同窓会とかいうのがあるらしいが英徳はそういったのがないし、卒業してからくる用事もないから懐かしいんだろうとガキのようにキョロキョロ落ち着かないかわいいつくしの顔をそのまま眺めていた。

「お前さ、一応ここには俺の助手できたってこと忘れんなよ?あとで茶を点てるんだからな。」

「わかってるよ~。でも懐かしくない?卒業してからはじめてだよ?教室とか変わんないのかな?あ、お茶室って西門の寄付で作ったんでしょ?じゃあ、今日のお茶菓子も西門流御用達のところ?今の時期のお茶菓子って言ったらさ・・・」

浮かれすぎてまったく地に足がついてない感じのつくしは懐かしがったり茶菓子の心配をしたり忙しい。それでも楽しそうな様子にこっちまで楽しい気分になってくる。ホントならこんな仕事引き受けねーんだが、こんなに喜ばれんならまあいいかって気になるんだから俺も甘い。

「失礼いたします。西門様、本日は依頼を引き受けていだたきありがとうございます。はじめまして、ワタクシ、生徒代表の藤堂真里亜です、よろしくお願いしたします。」

あいさつに来た女はきれいだがプライドの高そうないかにもお嬢様のガキ。まあ英徳らしい女の1人だな。

「はじめまして、私、牧野つくしです。私も卒業生なんですよ、今日はよろしくお願いしますね。うわ~きれいな子ですね、若宗匠。すごい美人さんですよ。」

「どうも、よろしく。」

「西門様のような卒業生がいてくださって光栄ですわ。本日、お茶会まで私がサポートさせていただきますのでいろいろ教えてくださいね。」

完全につくしを無視して俺にしか視線と笑った顔を見せない女に心の中で苦笑いとため息が出た。つくしを見ればつくしも笑いを堪えたような顔。だよな、こんなガキ相手じゃ確かに笑うしかない。

「それでは参りましょうか。あ、お付きの方はこちらでお待ちください。」

「いえ、彼女も行きますから。行くぞ、つくし。」

「え?あ、うん。」

今回、つくしは俺の弟子として連れてきたがあえてそんなそぶりを見せないように声をかければちょっと戸惑ったつくしとそれを睨みつけるガキ。おいおい、頼むからやめてくれ。

講堂までの道すがら、見える風景につくしはきょろきょろ楽しげに少し遅れて歩き、俺の隣にぴったり引っ付いてくる藤堂とかいう女はシナを作っては最近のパリではどうだとかファッションの話。どこの飲み屋のねーちゃんだ、お前は。どうも頭の痛くなりそうな今日1日はこうやって始まった。


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2016.12.28 懐かしのこの場所で 2
懐かしのこの場所で

パチパチパチパチ。きゃ~!こっち向いてぇ~!西門様ぁ~!パシャパシャッ!

「なあ、あのバカガキども、俺の話ちゃんと聞いてたと思うか?」

「自分がどうだったか思い出してみたら?あ、総はこんなの出たこともないか。あたしが高校生の頃は一応ちゃんと話聞いてたけど、たぶんあの子たちは話ってより総の顔見て写真撮る方に忙しかったと思うよ。」

「だよな・・・だからこんな仕事引き受けたくなかったんだよ、俺は。」

講演が終わった舞台袖でこそこそ話をする俺とつくし。どう見ても誰も話を聞いてないやつらに真面目に話をするのもバカらしかったが一応依頼はこなした。しかし、ホントにこんなのはバカらしい。どうせこいつらのほとんどが経済界に出るのに俺なんかの話が何の役に立つってんだ。

「西門様、お疲れさまでした。素晴らしい講演でしたわ。お茶会までまだお時間がございますからコーヒーでもご一緒いたしましょう。」

お前が一番聞いてなかっただろって言いたくなったのを堪えて藤堂を見ればまったく一分の隙もないメイク。今化粧直してきましたみたいな顔していったい俺の話の何を聞いてたんだか、逆に俺が聞いてみたい。

「あの、せっかくだからラウンジでコーヒーとかダメですか?」

「はい?」

つくしの提案に睨みを利かせた藤堂だったが俺ににっこり笑って『じゃあ、ラウンジにまいりましょう』なんていうあたり、昔を思い出して笑っちまう。どうもつくしも同じだったようで2人して苦笑いした。こんなとこまで昔と同じじゃなくてもいいんだがな、まったく。

「ラウンジは3年前に内装を一新いたしましたの。私の叔父がインテリアデザインの賞をとった有名な・・・」

延々自慢話を語る藤堂の横を俺が歩き、つくしは少し下がって歩く。仕事できた時は大体こんな感じでつくしは一歩後ろに下がって歩くんだが、どうも藤堂はそれを大きく勘違いしてるらしく俺にすり寄ってきてなれなれしく俺の腕に触れる。いったい何が悲しくてこんなガキ相手にって思うがさすがに怒れない。

「「うわ・・・」」

どう見てもどっかの勘違いヤローのゴテゴテ成金風に変わっちまったラウンジに思わず2人してため息とも落胆ともいえる声が出てしまったのは仕方ないだろう。品のいいなんて言葉とは程遠い、キラッキラゴッテゴテに飾り付けられたラウンジはどっかの王朝風デザインにすっかり変わっていた。

「ちょっと!コーヒー3つ、ここにもって来なさい。」

この趣味の悪い館の女王気取りの藤堂はそこらにいた男子学生に命令してコーヒーを頼んだ。それに誰より恐縮してるつくしにあきらめろと視線を送れば苦笑い。ホントに苦笑いするしかない状況だ、これは。ん?ちょっと待て、もしかして・・・

「なあ、あんた、もしかして静の親戚かなんかか?」

「ええ、私、静お姉様とは遠縁にあたりますの。ですから西門様のこともよく存じ上げてますわ。きっとここにいる誰よりも。」

そう言ってちらっとつくしを見ては優越感丸出しの顔を見せる。いくら静の遠縁でもお前なんかが俺の何を知ってるってんだ、いったい。どうもこういう勘違い女は苦手だ。だがその話に俺より食いついたのはつくしだった。

「静さんの?どおりでとっても美人さんだと思いました。静さんはお元気なんですか?もう何年会ってないんだろう?懐かしいね、総。今もフランスにいるんですか?今も弁護士さんしてるのかな?連絡とかあるんですか?あ、もうお子さんとか生まれたのかな?」

まさかのつくしの返しにびっくりしてる藤堂。さっきまで視界の端にも入れずに無視してたつくしが静を知ってるって話をするのは意外だったらしい。運ばれてきたコーヒーに礼を言って飲みつつ、藤堂を質問攻めにしてるつくしを見ておかしくなった。

ホントにへこたれず、昔も今も変わらない。表情をクルクル変えて話をするその顔は確かに大人になったがここにいた昔と何1つ変わってない気がする。昔のつくしの蹴りとグーで司を殴る姿を思い出して、そういやここだったと懐かしくなった。

「西門様。私、今度西門流でのお茶会に参加いたしますの。皆さん初釜にはどのようなお着物でこられるんですか?まだまだ初心者の私にいろいろ教えてくださいません?」

つくしの質問に適当に答えてた藤堂は俺に椅子を近づけて腕にその腕を回してくる。そんなこと、俺に聞かなくたって知ってるくせにあえて聞いてくるあたりが確信犯だよな。だがそんなのとっくにバレてんだがそんなこともわかんねーバカなのか。

「あのね、初釜には・・・」

「あなたには聞いてません。私は西門様に聞いてるんです。ねえ、西門様。今度ゆっくり教えてくださいませんか?私、とってもいいお店を知ってるんです。」

いったい高校生のガキのこれをどうしろってのか。俺に恋人がいることももう遊んでないことも、知ってるやつは知ってるってんだから藤堂だって知ってるはずなのにこの状況。お前みたいなガキに俺がその気になると思ってるところが痛いんだがいったいそれをどう説明するよ?

「お茶室の準備が整いました。」

そう呼びにきてくれたまじめそうな女の子にホントに感謝したくなった。
2016.12.28 懐かしのこの場所で 3
懐かしのこの場所で

久しぶりにきた茶室も何1つ変わってなかった。俺が選んだ内装もそのまま、きちんと手入れされて大事に使われてたことにちょっとうれしくなった。

「へえ~、あたしここにはいるのはじめてだ。そ、若宗匠が在学中の時には機会がありませんでしたから。」

俺が高等部にあがる時に茶室がほしいと言って作らせたここは内装も外装も俺の趣味で選んで作ったからまさに俺好みの茶室。昔からそこら辺の価値観は変わってないらしいし、つくしもそれがわかったのかにこにこして調度品を見てる。

「西門様、こちらの掛軸素晴らしいと思いません?私が最近寄付したんですのよ。」

茶室にはどう考えても派手すぎる掛軸を自慢げに見せる藤堂。これで西門の茶会に出んのか?お前、ホントに静と同じ血が一滴でも流れてんのかと聞きたくなるのをあえて無視すればムスッとして怒ってやがる。

「あの、藤堂さん、準備が終わりました。皆さんお待ちです。」

さっき呼びにきてくれた女の子はどうも気の弱そうな感じだ。英徳じゃかなり目立たない部類の子だろうな。だがラウンジからここまでつくしといろいろ茶の話で盛り上がってたから、茶を好きないい子なんだってことはよくわかる。

「じゃあ、始めましょうか。茶道部の方は私と弟子の牧野の動きをよく見ておかれるといいでしょう、勉強になると思います。あまり固くならずにリラックスしていきましょう、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いいたします。」

俺とつくしの言葉に見てた子たちが頭を下げる。女の子が7人、それが今の英徳の茶道部の人間らしい。その中でも威張り散らしてあれこれ命令してる藤堂はこの学園の女王ってとこか。かつての自分たちを思い出してどうも滑稽にしか見えない。

俺が茶を点てる姿を客として座ってる生徒だけでなく隣の部屋から見てる子たちまできゃあきゃあとまた写真を撮りまくってる。それがどれだけ失礼なことかだとか、茶室で静かにしようって気はないのかとか、言いたいことは山ほどあるがここではぐっと我慢だ、俺ももう大人なんだ。

「・・・あの、皆さん。お茶室でそういった行為は失礼に当たりますからやめていただけますか?せっかくお茶を点ててくださる若宗匠に対して失礼です。」

あまりにうるさいやつらにつくしがビシッと文句を言えば逆につくしを小馬鹿にしたかのように笑い睨みを利かせるやつら。俺の立場をわかって言ってくれてるつくしの言葉は届かなかったらしい。確かに俺らもこの年の頃、大人の言うことなんて聞いた試しなかったな。

「静かにできない方、最低限のマナーも守れない方は退席を。ここは茶室です。」

俺の睨みにようやく静かになった。茶を飲むやつらの手元はまあそれなりに作法を知ってるって感じだがただそれだけ。茶を楽しもうとかいう気はさらさらないのがわかる。作法さえ身についてればいいって習うやつがほとんどだから仕方ない。

それからつくしと交互に茶を点てたが、つくしが茶を点てる時には客になりたがるやつがほとんどおらず仕方なく後半は俺がずっと茶を点てた。つくしは茶道部の子達に手付きや所作の細かいところを小声で教えてやっていて、こいつも成長したな、なんて思えてうれしくなった。

終わってからは俺の周りには黄色い声を出す生徒たちが群がり、つくしの周りには茶道部の生徒たち。話が合うのか、いろいろ教えてやってる姿が何ともくすぐったい。数年前まで抹茶がまずいなんて言ってたやつの姿とはとても思えない。

「西門様、このあとみんなでご一緒にお食事でもどうですか?いろいろと在学中のお話も聞きたいですわ。」

藤堂のそんな言葉に取り巻きのようなやつらがさすがのなんだのと褒めたたえてる。

「申し訳ないがこのあとは予定が入ってますから。何かご質問があれば西門にお問い合わせください。うちの牧野がご対応しますよ、彼女も卒業生ですから。」

そう言って断れば藤堂がおもしろくないようにボソッと言った。聞こえたそれは俺をキレさせてくれるのに十分な一言だった。

「道明寺様のおさがりのブスなんて。あんなの相手にしたら恥だわ。」

「おい、バカ女。てめーに何がわかんだよ。司でさえ今でも頭のあがんねー女をそこまで言うなら覚悟できてんだろうな、お前の家潰すくらいわけねーんだぞ。」

「ちょっ、総!」

「どっかのホステスと大して変わんねー頭しかねーくせにお嬢様気取ってんな。趣味わり―ラウンジで女王気取って脳ミソつまってねー会話しかできないお前なんかとつくしとじゃ人間の出来が違うんだよ、わかったか整形ブス。」

「なっ!なんて失礼な!私にそんなこと言ってもいいと思ってるんですか!そんな女のためにこの私に暴言なんて!」

「ちょっと!何言ってんの、高校生相手に!」

「お前わかってねーみたいだけど、つくしに傷つければF4全員から報復がくるぞ。ついでに大河原と三条もついてる。静にも連絡とるか?つくしの人間性知ってる静ならお前なんてクソ扱いだぞ。その曲がった鼻さっさとなおしに行けよ、みっともねー。」

キレた俺の言葉に茶室がしんとなって誰も動かなかった。真っ赤な顔で怒りを堪えてるつくし以外は。
2016.12.28 懐かしのこの場所で 4
懐かしのこの場所で

「ちょっと、総!いくらなんでもまだ高校生なんだよ!?いくら気に食わないムカつく性格でもちょっとは目をつぶってあげないとかわいそうでしょ!?こんな性格なんだから見た目くらいよくしたいんだよ!桜子ほど完璧じゃなくても整形までして頑張ってんだからそこは見て見ぬふりしてあげないと!」

「おい、つくし。」

「鼻がちょっと曲がってたからって死ぬわけじゃないんだから!いくら頭の軽い子だってわかっててもそこを必死で隠そうとしてるんだからそこは知らんぷりするのが大人でしょ!大体総だって高校の頃はこんなろくでもない子相手に遊びまわってたじゃん!」

「ちょっと、あなた!いったい何なの!?調子に乗らないでいただきたいわ!」

「は?」

どうやら俺に対して頭に血が上ったつくしは俺を怒ることに夢中で自分の言ったことはあまりわかってなかったらしい。だが藤堂は怒りと恥ずかしさで真っ赤、周りは真っ青な顔になってる。お前、おもしろすぎるぞ、つくし。

「わ、私は整形なんてしていません!失礼なこと言わないでちょうだい!」

これ以上この場にはいられなかったのか藤堂が走って出ていくと取り巻きも慌ててついて行った。ありゃフォローが大変だろうな、なんて思いつつつくしを見ればこっちもしまったって顔してる。

「・・・あたし、もしかしてかなり余計なこと・・・言ったよね?」

「いいんじゃねーの、あれくらい。たまには挫折も必要だろ、あの頃の俺らみたいに。」

その後、どうやらつくしが藤堂に言ったことに周りの生徒たちはすっきりしたのか、余計に懐かれてまたぜひ遊びに来てほしいなんて頼まれてようやく俺らは解放された。明日からの藤堂の態度が楽しみだとみんな内心笑ってた。俺らもまわりにこんなこと思わせてたんだろうかとちょっと考えちまう。

「あ~絶対傷付いたよねえ。どうしよう、申し訳なかったな。総に怒るのに必死でちょっと失言しちゃって、あたしもいい大人なのに・・・」

さっきから延々とこの調子でブツブツ言ってるつくしは肩をガクッと落としてて、その姿さえ昔とダブって懐かしい。そういえばここで短いあいだだったけどこいつのいろんな顔を見てたなあと思い出す。あの頃は世の中にこんな女がいるのかと違う意味で呆気にとられてたんだが。

「なあ、せっかくだからどっか行きたいとこねーのか?こんな機会ないし行ってみようぜ。思い出の英徳学園だろ?ほらほら、どこ行く?」

「え?う~ん、じゃあ非常階段!」

そっちかよ。類との思い出の場所に俺と行こうなんてのはちょっと気に入らないが仕方ないとついて行けばルンルンとスキップでもしそうな軽い足取り。さっきの失言のショックは吹っ切れたらしい。

「うわ~懐かしい!変わってない!」

非常階段なんてそうそう変わるもんじゃないだろと思いつつ類とつくしの定位置に立つ。見えるのはなんてことない中庭の風景と空。ここで2人は飽きることなく一緒にいて、時には2人で居眠りしてたよな。

「なんか思い出すね~、ここ。類といっつも一緒にいて話とかあんまりしなかったけどなんでもわかってくれてたなあ。類、いっつも寝てて、その寝顔が眠り姫みたいとか思ったこともあったかな。」

きっと今つくしの目に映ってるのはあの頃の類。そしてここで司を思ってた時間。それを類が慰めてたやさしい時間。そこには俺はいない。いや、この学園でのつくしの記憶に俺はどれだけいるんだろうか。たぶん誰より俺との記憶は少ないだろう、俺らはそんな近い仲じゃなかった。

そんな過去に嫉妬してなんとなくつくしの顔が見れない。あの頃の自分に戻れたら、なんて思うのもつくしに出会わなかったら考えなかったことだ。

「あの頃の総さ、ホントサイテーだったよね。いっつも両脇に毎度毎度違う女の子抱えてはべらせてて『いつか刺されるよ』とかあたしが言っても3回ルール律儀に守って遊びまくってたもんね。あの頃の総が今の総見たら『俺どうしたんだ?』とか言いそうだよね。」

あり得ないことを考えてくすくす笑うつくし。まあ確かにあの頃のことを言われると弁解の余地もない。だからできればそこは思い出さないでほしいんだが。

「遊んでばっかりのサイテーな人だけどいつかまじめに恋愛できるといいなって思ってたんだけど、まさかそれがあたしとだなんてね。ホントびっくり。ありえないよね。ねえ、あの頃より、今は幸せかな、西門さん。」

”西門さん”ってまるで昔に戻ったような呼び方につくしの顔を見れば笑って俺を見てる。

「西門さん。あの頃のお祭りコンビで美作さんと遊んでた頃より今は幸せ?」

なんて言っていいのかわからない表情をされて思わず返事に詰まった。

「あたしは幸せだよ。あの頃より、ここにいた時より、今が幸せ。今、ここに総と一緒にいられることが幸せ。総は?」

「俺も・・・幸せだ。あの頃より、今お前と一緒にいられて幸せだよ、つくし。」

なんだかたまらなくなってぎゅっとつくしを引き寄せて抱きしめた。今のこいつも昔のこいつも全部を抱きしめたい、そんな妙な気分。できるはずないのにこいつの全部を、過去まで独占したくなるなんてどんだけ心が狭いんだ、俺は。
2016.12.28 懐かしのこの場所で 5
懐かしのこの場所で

”こんなところで嫌だ”とか言いだしそうなのに、今日はおとなしく俺の背中に手を回すつくしがなんだか変な感じだけどすげーうれしい。

「あのね、あの頃の総、いっつも笑ってたけどどこかちょっと寂しそうだったでしょ?イベントの時はいっつも人を避けて1人でいて、みんなに弱音も吐かないしつらいとか言わないし態度にも出さないし。だから、いまさらできないけど、あの頃の総も抱きしめてあげたかったからここに来たの。」

「・・・は?」

「18歳の西門総二郎くん、お誕生日おめでとう。いい加減遊ぶのやめて大人のふりやめて、たまには子供みたいに甘えなさいね、あたしが抱きしめてあげるから。あたしがいつも味方だからね~。」

まるで小さな子供をあやすかのような言い方なのになんとも言えない気分になって何も言えなかった。18歳の、まだガキだった俺を、今俺を好きだって言ってくれるつくしが抱きしめてくれるって。なんかすげー恥ずかしいけどすげーあったかい気持ちになるのはなんなんだ?

「ずっとそばにいてあげるから早く目を覚ますんだよ~。そのうち刺されちゃうからね~。あ、あの頃の総を道明寺みたいに蹴りでも入れてたらもっと早くまともになったかな?」

「・・・お前、俺が司よりまともじゃなかったみたいな言い方すんな。」

「え~、だってある意味まともじゃなかったよ?美作さんと2人異常って感じで。異常な女好き。」

胸の中でくすくす笑うつくしがなんだかすげー愛おしい。いつもこいつには意表を突かれて何も言えなくなって、でももっと愛おしいと思うようになる。止まらないくらいに、溢れるくらいに。なんで俺をそんな気持ちにさせんのか。だけどそんな気持ちにさせてくれるのはこいつだけで。

「俺ってかなりの遊び人でサイテーヤローだけど、それでも俺と付き合ってくれないか?牧野。」

なんとなくつくしの言い方を真似して言ってみた。戻れない過去に戻った気分で。

「え~、どうしよう。他の子みんなとちゃんと別れてくれたら付き合ってあげてもいいよ、西門さん。」

「付き合ってあげてもいいって上から目線かよ。俺相手にすげーいい態度だな、牧野。」

「だってみんなの恋人エロ門と付き合うんだよ?たくさんの女の子の嫉妬であたしが刺されそうになるんだからこれぐらい言わせてもらわないと割に合わない。」

なんともガキっぽいやりとりだと思うのに、心の中はあったかいのはなんでだろう。

「あたしが実はお子ちゃまなエロ門くんを鍛え直してかわいがってあげるからいつでもかかってきなさい。」

誰が聞いたってバカにしてるとしか思えない言葉なのに俺の耳には違って聞こえる。過去の俺も全部好きだって言われてるように聞こえる。過去の俺も、俺の過去も、全部愛してるって聞こえるのは俺の気のせいか?

俺の背中に回してた手を放して俺の腕の中から離れていったつくし。ちょっと赤い顔をして俺を見上げてたかと思ったら俺の首に手を回してきた。

「大好きだよ、西門さん。あの頃も、今も、全部愛してる。誕生日おめでとう、総。」

そう言って俺にチュッとキスをしたつくし。俺はといえば、つくしの行動と言動に呆気にとられて何も言えなかった。

「ここで総の誕生日にキスしたから、ここも2人の思い出になるね。類にはちょっと申し訳ないけど・・・2人だけの秘密。」

恥ずかしそうにまた俺にキュッと抱きついてくる。おい、言われた俺の方がめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど、このいたたまれない気持ちはどうしてくれる。このあふれきってる気持ちをさっきのキスだけで終わらせられると思ってんのか。

「あ~あ、エロ門の総相手じゃあたしも身が持たないよね~。ここはやっぱり我慢させるところから覚えさせないとろくな大人にならないよね。」

いまだに18の俺に言うような言い方で話しながら俺の腕の中でくすくす笑うつくし。まったく、俺のタガを勝手に外しといて放置するなんてお前はいったいどこでそんな技覚えたんだ、この無自覚バカ女。俺相手にまだ学習するってことを知らないのか。

「つくしちゃん?どうせ思い出にすんならもっと濃厚な思い出にしねーとな。」

俺を見上げたつくしの顔はヤバいって顔してたがもう遅い。どうせなら忘れられねー思い出にしようじゃねーの。抵抗も許さないようにしゃべりだす前にキスで口を塞ぐ。片手で腰を支えて、片手で首の後ろをキュッと支えてつくしの口内をたっぷりと味わうように舌を差し込む。

「ちょ・・・んんっ・・・だっ・・・め・・・」

そんなの聞けるか。抵抗なんて軽くいなして何度も舌を絡めて蹂躙する。こうやってお前に火をつけるこの瞬間がすげー好きだって知らないだろ。お前の体が熱くなっていく瞬間が好きだって知らないよな、それが俺を余計燃えさせるってこと。

抵抗がやむまで延々と熱いキスをし続ければちょっととろんとした顔と赤い頬と濡れた唇で俺を誘うつくしの出来上がり。これが俺をあおるんだよ。もっとお前がほしいって俺の体に火をつけるんだ。

「18の俺はこれくらいじゃ止まんねーよな?覚悟しろよ、つくしちゃん。」

俺の目を見るつくしの顔はさらに赤くなった。甘いぞ、つくし。
2016.12.28 懐かしのこの場所で 6【Fin】
懐かしのこの場所で

俺の目の中のあやしい光を感じ取ったのか、顔を赤くしたまま無駄な抵抗をするつくし。そうそう、それでこそお前だよな。

「何考えてんのよ!ここ、学校だよ!しかも外!非常階段!エッチなことしたら捕まる!」

「なんだよ、お前が誘ったんだろ?お前がキスしてきて18の俺も好きだって言ってくれたから俺はあの頃のエロ門に戻っちゃったわけ。あの頃の俺ってかなり節操なかったよな、こんな感じか?」

耳たぶにチュッとキスをして甘噛みすればつくしの体がフルっと震える。お前の弱いとこなんて全部知ってんだよ、俺は。

「あれ、つくしちゃんも感じちゃった?じゃあ期待に答えねーとな。」

まったくもって理不尽な言い方をしてつくしの首筋に唇を這わす。着物じゃなきゃこのままここでやっちゃってもいいくらいなんだが、さすがにこの寒さでこんなとこでやりだしたら風邪引いて寝込むよな。

「あ、ちょ・・・やだ、総。」

俺の手がつくしのお尻を撫でてるのが気になったのか身をよじるけど、ムダムダ。あおってくれたんだからそれなりの礼はしねーと。

「ちょっと、こんなとこでダメだってば。もう、やめてよバカ。」

「こんなとこじゃなきゃいいのか?」

俺の質問に固まるつくし。困れ困れ、俺はそんなお前も好きでしょうがないんだから。

「じゃあ茶室に行くか?あそこでなら鍵かかるしやってもわかんねーよな。ああ、音楽室って手もあるぞ、あそこ防音だからつくしの声が漏れる心配もない。それとも体育館・・・」

「なんで学校の中でそんなことする選択肢しかないのよ!変態エロ門!ここは神聖な学校なの!勉強するとこなの!」

「ほ~う。確かその神聖な学校で司とも類ともキスしてた女がいなかったか?」

「なっ!そんなのほっぺにとかでしょ!そっ、それにそんなのもう時効・・・」

「だって俺今18だし~。ってことはつくしちゃんは17か?あいつらでさえそんなことやってたんだから俺はもっとすげーことやっちゃっても全然OKだよな?」

「OKじゃない!ダメ!絶対だめ!」

マジで俺に襲われるとでも思ってんのか、真剣にビビってるつくしがおもしろい。確か昔も俺とあきらが何かきわどいこと言うたびに真っ赤になって慌ててた。男女のことに疎かった初心いつくしが懐かしい。

「ね?ここじゃなきゃいいから、ここはやめようよ。ね、総、お願い。」

「ふ~ん、ここじゃなきゃいいわけだ。んじゃ、行こうかつくしちゃん。ここじゃないとこでたっぷりかわいがってやるよ。」

耳にチュッとキスを落とせば困惑顔。せっかくのお前からのお誘いだから乗らせていただきますよ、俺は。つくしの肩を抱いて非常階段を離れて玄関へ。途中で車を回すよう運転手に連絡をした。

「そ、総?あの、どこ行くの?」

「ん~?ここじゃなくてつくしちゃんをおいしくいただけるところ。」

「は?何言ってんの?お屋敷に帰らないと・・・それに、着物!あたしたちまだ着物着たままだし・・・」

「大丈夫大丈夫。俺、着付けできるし、お前も自分で着物着れるだろ?どこで脱いだって問題ねーよ。嫌なら服くらい買ってやる。」

「いや、そうじゃなくて!あ、プ、プレゼント!総の誕生日プレゼント、お屋敷に置いてるし!だからお屋敷に一度戻って・・・」

「それは明日もらうからいい。今はつくしちゃんをおいしくいただきたいんだよ。ん~、せっかくだから久しぶりに張り切って朝までコースか?」

もう真っ赤であたふたしながら何とかしたいって感じのつくしだけどそんなんで俺の手から逃れられるとでも思ってんのか。

「いや、あの、あたし、できればその朝までコースってのは遠慮したいっていうか・・・」

「んじゃここで学生気分だしてやるのでもいいぞ?茶室に音楽室に教室に・・・ああ、中庭の先の温室って手もある。お前の好きな方選んでいいぞ。」

「だから選択肢がおかしいってば!」

さすがに怒り出したつくしの腰に手を回す。遠く教室から俺らを見てる視線は全部無視。ここがどこでも俺は気にしない。

「18の俺も今の俺も好きで愛してくれてるんだろ?じゃあ18の俺からも今の俺からも愛してくれてありがとってお礼をしねーと。昔のお前に礼はできねーから今のお前にたっぷり愛情注ぎまくるしかねーだろ。何なら1週間くらいずっと注ぎまくってもいいぜ?かわいいつくしちゃんはどっちがお好みだ?」

「う・・・」

「バカやってた俺も、いきがってた俺も好きだって言って抱きしめてくれるお前が好きすぎてどうにかなりそうなんだよ。だからこのまま行こうぜ、お前に触れたくてしょうがない。」

「総・・・」

「お前みたいにいい女が俺だけのものだって確認したいんだよ、実感したい。司でも類でもなく、俺だけの牧野つくしだって。」

「・・・うん、いいよ。」

そのまま超特急で予約してたホテルになだれこんだ俺らはプレゼントもその日のディナーも無視して抱き合った。何度も何度も、まるでガキみたいに飽きることなくつくしを食べつくした。

「お前がいてくれれば別に誕生日じゃなくても俺は幸せだよ。」

眠ったつくしの頬を撫でてそうつぶやいた。俺の誕生日、今日の俺も、きっと18の俺も幸せな日。こいつがいればこの先もずっと幸せだ。